群像2013年9月号

長篇一挙掲載260枚

西 加奈子「舞台」

自意識に苛まれる青年・葉太は、単身ニューヨーク旅行の初日、セントラルパークで全財産の入った鞄を盗まれてしまう。他人の目を必要以上に気にして生きてきた彼は、「初日で盗難(笑)」なんて恥ずかしいと誰にも相談できない。着の身着のままの街歩きが始まる――。西加奈子『舞台』、可笑しくも切ない「自分探し」の物語です。


短篇 片岡義男「吉祥寺ではコーヒーを飲まない」

36歳の上条安奈には、俳優をしている3歳年下の弟・修司がいる。修司はジャズをやっている姉を敬愛しており、しょっちゅう電話を掛けてくる。ある日、弟が恋人と別れたことに気づいた安奈は、吉祥寺で弟の元恋人とコーヒーでも飲もうかとスマートフォンを取り出して……。片岡義男「吉祥寺ではコーヒーを飲まない」、不思議な“女子会”を描いた短篇です。


連作小説第6回

町田 康「ホサナ」

「私」は銀行に向かう道すがら、敗北感について考えている。昨日までの7日間に7度、50万円ずつを舵木禱子が指定する口座に振り込んだからだ。敗北感に打ち震える「私」に、犬は哀れむような目を向けて言った。「もう、日本くるぶしのことは考えなくていいよ」――。第6回を迎える町田康の連作小説「ホサナ」、必読です!


短篇 中納直子

吉田大助「本谷有希子論」

中納直子の短篇「おにんぎょさん」は、30代独身・カフェオーナーの「私」が主人公。大学生との「恋愛ごっこ」に飽きて、ダッチワイフならぬダッチハズバンドを買ってしまって……!?

評論は本谷有希子論。『嵐のピクニック』で大江健三郎賞を受賞し、『自分を好きになる方法』でさらなる飛躍を遂げた本谷。デビュー時から親交のあるライター・吉田大助が、「誤解」と「解放」というキーワードから、本谷文学を紐解きます。


「存在しない小説」最終回

いとうせいこう「オン・ザ・ビーチ」

いとうせいこう「存在しない小説」がついに完結。今から10年ほど先、アドリア海を望むリゾートホテルのバルコニーで、77歳の「私」は若い警備員のヤコブ・ボバンを眺めている。彼はほとんど一日中「私」の方を見張っていて、ノートに何かを書きつけている。そのノートを盗み読んだ「私」は、内容にとりつかれてしまい……。


もくじ

〈長篇260枚〉

舞台  西 加奈子

〈連作小説〉

ホサナ〔6〕  町田 康

〈短篇〉

吉祥寺ではコーヒーを飲まない  片岡義男

おにんぎょさん  中納直子

〈評論〉

本谷有希子の「誤解」と「解放」  吉田大助

〈追悼 高橋たか子〉

高橋たか子の「精神」  中島義道

高橋たか子の思い出  鈴木 晶

〈連載小説〉

存在しない小説 最終回  いとうせいこう

死に支度〔2〕  瀬戸内寂聴

寂しい丘で狩りをする〔8〕  辻原 登

屋根屋〔11〕  村田喜代子

地上生活者 第五部 邂逅と思索〔19〕  李 恢成

夜は終わらない〔23〕  星野智幸

〈連載評論〉

皇后考〔12〕  原 武史

〈世界史〉の哲学〔54〕  大澤真幸

〈連載〉

創作の極意と掟〔9〕  筒井康隆

現代短歌ノート〔42〕  穂村 弘

映画時評〔57〕  蓮實重彦

〈随筆〉

汚された珈琲茶碗  柴田 翔

ハンブルク、手作りの映画祭  内藤 誠

深い淵  小川 恵

夜と熱  渡邉十絲子

〈私のベスト3〉

動けなくなる動物  小山田浩子

読み・書き・自己言及  結城 浩

夏の夜想曲  北川智子

〈書評〉

世界中のリンデのために(『自分を好きになる方法』本谷有希子)  青山七恵

読むことと、書くこと(『銀河鉄道の彼方に』高橋源一郎)  佐藤康智

「考えるな、見よ!」(『往古来今』礒﨑憲一郎)  大澤 聡

ブツなき内省のゆくえ(『新世紀神曲』大澤信亮)  山城むつみ

〈創作合評〉

吉増剛造+中条省平+長野まゆみ

「風」青山七恵(文藝2013年秋号)

「ピエタとトランジ」藤野可織(群像2013年8月号)

「激越!!プロ野球県聞録」青木淳悟(すばる2013年8月号)