群像2013年11月号

中篇170枚 綿矢りさ「いなか、の、すとーかー」

陶芸家の透は大学卒業後、生まれ故郷の小椚村に戻り、順調にキャリアを積み始めていた。ところがTV番組に取り上げられたのをきっかけに、学生時代からのストーカーが、村にまで姿を見せるようになって……。「いなか、の、すとーかー」綿矢りさが創作の苦悩をユーモラスに綴ります。


日和聡子「かげろう草紙」

吉田知子「その年の七月」

ある縁日の夜のこと、深谷弥惣介は自家製の草双紙を茣蓙に並べ、売り文句および口上を述べ立てていたが、御客はとんとつかまらない。そこに、奇妙な御面をかむった大柄な御客があらわれ、商品すべてを買い取ると言い出して……。日和聡子「かげろう草紙」、必読です。

吉田知子「その年の七月」は、ふしぎな味わいの短篇。変わった形の「離れ」を借りている私。家賃折半のため新たな同居人を求めるが、やってきた女性はどうも得体が知れなくて……。


『未明の闘争』刊行記念対談

保坂和志×磯﨑憲一郎

2009年から4年にわたり「群像」に連載された保坂和志『未明の闘争』単行本刊行を記念し、磯﨑憲一郎との対談がおこなわれました。保坂作品独特の文体や整合性という縛りについて語り合います。


谷崎賞受賞記念インタビュー

川上未映子

川上未映子初の短編集『愛の夢とか』が、第49回谷崎潤一郎賞を受賞しました。詩人でもある著者にとって詩と短篇はどう違うのか、ふしぎな設定のなかでもリアリズムを徹底する姿勢の裏には何があるのか、江南亜美子が川上作品の核心に迫ります。


安藤礼二「折口信夫の神」

佐々木 敦「近代文学vs近代絵画」

安藤礼二の連作評論、第7回は「折口信夫の神」。折口信夫にとって「神」とは何を意味したのか? そこから導き出される「憑依」の論理とは?

佐々木敦の連作批評「新しい小説のために」は第3回。柄谷行人『日本近代文学の起源』を取り上げ、「近代文学」と「近代絵画」を比較・検討します。


もくじ

〈中篇 170枚〉

いなか、の、すとーかー  綿矢りさ

〈短篇〉

かげろう草紙  日和聡子

その年の七月  吉田知子

〈対談〉

小説はなぜおもしろいのか 長篇『未明の闘争』をめぐって  保坂和志×磯﨑憲一郎

〈インタビュー〉

『愛の夢とか』――リアリズムが見せる風景  川上未映子  聞き手・江南亜美子

〈連作評論〉〔7〕

折口信夫の神  安藤礼二

〈連作批評〉〔3〕

「近代文学vs近代絵画」  佐々木 敦

〈連載小説〉

寂しい丘で狩りをする 最終回  辻原 登

屋根屋 最終回  村田喜代子

時穴みみか〔2〕  藤野千夜

死に支度〔4〕  瀬戸内寂聴

パノララ〔8〕  柴崎友香

地上生活者 第五部 邂逅と思索〔21〕  李 恢成

〈連載評論〉

皇后考〔14〕  原 武史

〈世界史〉の哲学〔56〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔44〕  穂村 弘

映画時評〔59〕  蓮實重彦

〈随筆〉

青いロシナンテ  野谷文昭

《生誕百年》を迎えたエメ・セゼール  恒川邦夫

りんごアップルジュースと憲法  木村草太

夢の取り分  大濱普美子

〈私のベスト3〉

トウモロコシ三昧  芹澤 恵

ワインに感染される店  池谷裕二

北野映画の好きなシーン  福満しげゆき

〈書評〉

ジョンたちのこと(『未明の闘争』保坂和志)  佐々木 敦

それぞれの不安の逃れ方(『初夏の色』橋本 治)  大竹昭子

優しい小説(『昼田とハッコウ』山崎ナオコーラ)  西 加奈子

疾駆する「物語の精神」(『おはなしして子ちゃん』藤野可織)  松永美穂

〈創作合評〉

小池昌代+阿部公彦+中村文則

「アフター・ジャスティフィケイション・オブ・ライフ」波多野 陸(群像2013年10号)

「寝相」滝口悠生(新潮2013年10月号)

「新しい極刑」木下古栗(すばる2013年10月号)