群像2011年7月号

彼は未来を変えられるのか

伊坂幸太郎「超人」

未来が予知できるようになってしまった青年は、出会うはずのなかった大物政治家と対峙し、大きな選択を迫られる。彼はスーパーマンになれるのか? 今、読まれるべき作家・伊坂幸太郎の作品が5月号に続き「群像」に登場です。


越境する俊英の衝撃作

円城塔「道化師の蝶」

他人の着想を集める旅と、世界中に文章を残す旅。旅人たちが出会うとき、誰も見たことのない蝶が飛び立つ――。昨年、野間文芸新人賞を受賞し、ジャンルを易々と越境する俊英・円城塔の衝撃作。


創作は丹下健太、原田ひ香、岡崎祥久

「突然の鶏の訪問にクラスは騒然となった。」追い出されても教室に通い続ける鶏、身代わりのように登校しなくなった少年。不可解で切なくて可笑しい、丹下健太の短篇「ぱんぱんぱん」
原田ひ香が結婚直前の男女を描いた中篇「あめよび」。眼鏡屋で働く美子と、ラジオの放送作家を夢見る輝男は、付き合って6年になる。彼らが結婚できない理由は、輝男の持つもう一つの「名前」に秘められていた――。
42歳、子持ち、離婚歴有り。そんな「僕」だがネットワーク管理者として奇跡的に再就職できた。借金を返すため母の家を訪れると、性別の分からない幻想的な人物・ネリマに出会う。現実の地盤が揺らぐ中篇「青空」で、岡崎祥久ワールドをご堪能下さい。


第5回大江賞記念対談

大江健三郎×星野智幸

作家に必要な「小説的思考力」と「小説的想像力」とは何か、大江健三郎と第5回大江賞受賞者の星野智幸が語り合います。受賞作『俺俺』はいかにしてリアリティーを獲得したのか? 会場からの質問を巻き込んで、白熱した小説談義をお楽しみ下さい。


映画とフィクションの臨界点に迫る

青山真治×蓮實重彦

フィルムからデジタルへ。中上健次から谷崎潤一郎へ。ムルナウに近づき、小津を修正し、同時の透明さを手に入れた――青山真治監督の4年ぶりの長編映画「東京公園」 を、「映画時評」連載中の蓮實重彦が解き明かす!


もくじ

〈創作〉

超人  伊坂幸太郎

道化師の蝶  円城塔

ぱんぱんぱん  丹下健太

あめよび  原田ひ香

青空  岡崎祥久

〈第五回大江健三郎賞記念対談〉

危険に際して、異質な個人が声を合わせる  大江健三郎×星野智幸

〈対談〉

「混沌」から「透明」へ  青山真治×蓮實重彦

〈特別寄稿〉

被災地までの距離  平野啓一郎

〈連載小説〉

雲をつかむ話〔7〕  多和田葉子

燃える家〔9〕  田中慎弥

昼田とハッコウ〔17〕  山崎ナオコーラ

日本文学盛衰史 戦後文学篇〔19〕  高橋源一郎

未明の闘争〔21〕  保坂和志

〈連載評論〉

安部公房を読む〔7〕  苅部直

〈世界史〉の哲学〔29〕  大澤真幸

〈連載〉

会社員小説をめぐって〔13〕  伊井直行

現代短歌ノート〔16〕  穂村 弘

「生」の日ばかり〔28〕  秋山 駿

映画時評〔31〕  蓮實重彦

〈随筆〉

「平凡」な「道草」  古屋健三

言葉が無力になったとき  熊谷達也

わたしの中の原発  堀川惠子

お金がないから体で  木村紅美

〈私のベスト3〉

ポストt.A.T.u(タトゥー)のロシアン・ポップス  沼野恭子

好きな「女」の部位  吉村萬壱

避難袋の中の三冊  藤谷 治

〈書評〉

「肉体」としての私小説(『肉体について』三浦哲郎)  富岡幸一郎

時間のひと粒ひと粒を描く(『なずな』堀江敏幸)  鴻巣友季子

海を抱くしずかなユートピア(『半島へ』稲葉真弓)  東 直子

「ポルトレ」作家としての関川夏央(『子規、最後の八年』関川夏央)  内田 樹

〈創作合評〉

島田雅彦+安藤礼二+田中弥生

「群魚のすみか」米田夕歌里(すばる2011年6月号)
「群衆のナンバー」穂田川洋山(文學界2011年6月号)
「ぴんぞろ」戌井昭人(群像2011年6月号)