群像2011年10月号

280枚一挙掲載

石田 千「きなりの雲」

失った恋の痛み。ほどけてしまった彼女の心が、きなりの手触りの日々のなかで、ゆっくりとふっくらと編み直されてゆく。「あめりかむら」が第145回芥川賞候補作になり、いま最注目の著者、石田 千の最新長篇です。


野間新人賞作家の珠玉の短篇

柴崎友香「ここで、ここで」

大阪の街が一望できる橋の真ん中で、わたしは動けなくなった。ふとした瞬間に蘇る、身体の奥底の傷跡。かつて、この場所で、その記憶は刻まれた。柴崎友香による珠玉の短篇です。


間取りから思い出す最古の記憶

川崎 徹「最後に誉めるもの」

最古の記憶を探る授業で、女子学生が黒板に書き始めた家の間取り図。わたしにもまた、失われた生家の記憶があった。幸せを象徴する“いただき物の家”でのできごとを描く、川崎 徹の中篇をお楽しみ下さい。


群像65周年特別寄稿

「群像と私」

1946年に創刊された「群像」は、おかげさまで今号で65周年を迎えました。本誌と縁が深く、最先端で活躍し続ける 大江健三郎、柄谷行人、津島佑子、多和田葉子、阿部和重の5氏によるエッセイから、「群像」の65年間が浮かび上がります。


話題の書を巡る刺激的対話

大澤真幸×保坂和志

原発問題の根源はキリスト教にあった――。小説的思考を破綻させ、未来の他者を考える革命的対話が実現しました。本誌で「〈世界史〉の哲学」を連載中の大澤真幸と、「未明の闘争」を連載中の保坂和志による、刺激的な対談です。


もくじ

〈創作〉

きなりの雲  石田 千

ここで、ここで  柴崎友香

最後に誉めるもの  川崎 徹

〈対談〉

3・11と『〈世界史〉の哲学』  大澤真幸×保坂和志

〈65周年特別寄稿「群像と私」〉

小説の教育  大江健三郎

「群像」と私  柄谷行人

『草の臥所』と『光の領分』のころ  津島佑子

文芸誌の不思議  多和田葉子

Are You Lonesome Tonight?  阿部和重

〈連載小説〉

夜は終わらない〔2〕  星野智幸

雲をつかむ話〔9〕  多和田葉子

燃える家〔12〕  田中慎弥

昼田とハッコウ〔20〕  山崎ナオコーラ

未明の闘争〔24〕  保坂和志

〈連載評論〉

安部公房を読む〔10〕  苅部 直

〈連載〉

会社員小説をめぐって〔16〕  伊井直行

現代短歌ノート〔19〕  穂村 弘

「生」の日ばかり〔31〕  秋山 駿

映画時評〔34〕  蓮實重彦

〈随筆〉

翻訳と創作  リービ英雄

生きてくれ猫  西 加奈子

朗読少女  文月悠光

名前の不在  菅谷憲興

〈私のベスト3〉

面倒くさいけれど面白いこと  松浦弥太郎

野良猫の生活ぶり  丹下健太

なんとなく、まちがえる  飯塚数人

〈書評〉

ひたむきな夫婦物語(『紅梅』津村節子)  古屋健三

窓の外からずっと(『地上生活者 第4部 痛苦の感銘』李恢成)  永岡杜人

その孤独をわれわれは……(『マザーズ』金原ひとみ)  藤沢 周

賽の目は宇宙に繋がる(『ぴんぞろ』戌井昭人)  安藤礼二

地質学のようにみごとな短編小説の編年記(『村上春樹の短編を英語で読む 1979~2011』加藤典洋)  橋爪大三郎

〈創作合評〉

沼野充義+陣野俊史+中島京子

「すべて真夜中の恋人たち」川上未映子(群像2011年9月号)

「来たれ、野球部」鹿島田真希(群像2011年8、9月号)