群像2011年12月号

豪華執筆陣による特集「短篇小説」 池澤夏樹、稲葉真弓、岡田利規、髙村 薫、長野まゆみ、中村文則、岸本佐知子(訳)、久野量一(訳)

日本、アメリカ、キューバから集まった珠玉の作品たち。緊密の味わい、鋭利な読み口――「短篇」の真髄を堪能する8作品をぜひお楽しみ下さい!


それは男の固執か、狂気か

墨谷 渉「今宵ダンスとともに」(130枚)

住設機器メーカーに勤める庄司くんは、工場の製造ラインのことばかり考えている。交際している中野理美さんとの結婚を考えていたが、彼女はマサという男と密会しているらしい。庄司くんはどうしても中野さんの自分に対する「本当の評価」が知りたくなり、ある行動に出るのだが――。フェティシズムや暴力、快楽を書き続けてきた墨谷 渉の新境地!


劇作家の奇想が膨らみ迸る

松井 周「土産」(110枚)

私たちは畑から生まれ、髪を振りながら競い合って伸びていた。養分も感情も地下水路で伝えることができた。ところが黒髪を持つ「私」は抗えない力で引き抜かれてしまう。顔から下を他人に晒すのはタブーなのに…! 今年、『自慢の息子』で第55回岸田國士戯曲賞を受賞した松井 周が作り出す独特の世界。


特集「戦後文学を読む」

第7弾は藤枝静男

独自の宇宙的感覚と言葉の物質性を併せ持つ藤枝静男「悲しいだけ」を再録。知的かつ野蛮な藤枝文学の両極に、奥泉 光、堀江敏幸、桜庭一樹が迫ります。

佐藤友哉の連作小説は緊急特別企画「恋せよ原発」。「デカイ一発」を書くことへの羞恥心を文学者は持たないのか!?


対談 古井由吉×松浦寿輝

「小説家が老いるということ」

連作短篇集『蜩の声』を発表したばかりの古井由吉と、三島由紀夫の虚構の老後を描いた『不可能』が話題の松浦寿輝が、小説について語り尽くしました。繰り返される過去と現在の往復運動。老いの視線に立ち現れる人生の時間とは――。


もくじ

〈特集 短篇小説〉

大聖堂  池澤夏樹

エイを探しに  稲葉真弓

問題の解決  岡田利規

街宣車のある風景  髙村 薫

テンモウカイカイソニシテモラサズ  長野まゆみ

二年前のこと  中村文則

赤いリボン  ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子・訳

ハリケーン  エナ・ルシーア・ポルテラ 久野量一・訳

〈創作〉

今宵ダンスとともに  墨谷 渉

土産  松井 周

〈特集 戦後文学を読む〔7〕藤枝静男〉

〈合評〉「田紳有楽」「悲しいだけ」奥泉 光+堀江敏幸+桜庭一樹

〈再録〉「悲しいだけ」

〈小説〉緊急特別企画 恋せよ原発 東日本大震災・福島原発事故に対する文学者たちの模範解答予防集~あるいは『深夜の主演』  佐藤友哉

〈対談〉

『蜩の声』そして『不可能』――小説家が老いるということ  古井由吉+松浦寿輝

〈評論〉

本谷有希子の「荒事(あらごと)」的表現  田中弥生

〈連載小説〉

夜は終わらない〔4〕  星野智幸

雲をつかむ話〔11〕  多和田葉子

燃える家〔14〕  田中慎弥

昼田とハッコウ〔22〕  山崎ナオコーラ

未明の闘争〔26〕  保坂和志

〈連載評論〉

安部公房を読む 最終回  苅部 直

〈世界史〉の哲学〔33〕  大澤真幸

〈連載〉

会社員小説をめぐって 最終回  伊井直行

現代短歌ノート〔21〕  穂村 弘

「生」の日ばかり〔33〕  秋山 駿

映画時評〔36〕  蓮實重彦

〈随筆〉

「たまがき」の手紙  関川夏央

永遠の火、ともる  千石英世

インテリゲンツァがやってくる!  大竹昭子

探検家の憂鬱  角幡唯介

〈私のベスト3〉

二度と食べたくない料理  海猫沢めろん

女性を強く感じた瞬間  増田俊也

「のぼちゃん」っぽさ  太田靖久

〈書評〉

物語の結晶する直前(『散歩の一歩』黒井千次)  千野帽子

「君だちも大抵蟹なんですよ」(『平成猿蟹合戦図』吉田修一)  清水良典

意図的すごろくの果て(『不愉快な本の続編』絲山秋子)  福永 信

思考のかたちをなぞるペン(『これはペンです』円城 塔)  若島 正

脚本ではできないこと(『人生オークション』原田ひ香)  中島たい子

〈創作合評〉

三浦雅士+鹿島田真希+鴻巣有希子

「鎌倉へのカーブ」青木淳悟(文藝2011年冬号)

「隠し事」羽田圭介(文藝2011年冬号)

「Tシャツ」木下古栗(群像2011年11月号)