群像2015年2月号

カラー保存版

絵本 御伽草子 

新春特別企画、オールカラー保存版「絵本 御伽草子」! 町田康、堀江敏幸、青山七恵、藤野可織、日和聡子、橋本治の豪華執筆陣が、御伽草子をテーマに生み出した6つの短篇――。それぞれの作品にぴったりの、美しい挿絵とともにお送りします。


町田 康×石黒亜矢子

堀江敏幸×MARUU

生まれてから百年経つと、物にも意識が生まれてくる。付喪神となった茶碗や俎、数珠たちは、人間への復讐を目論む好戦派と、慈悲の心を実践したい穏健派に分かれ――!? 町田康が描く妖怪たちの大戦争「付喪神」石黒亜矢子による個性豊かな妖怪たちのイラストも必見です。

悪をすてて善をきわめた高僧のところにやってきた老鼠法師と猫又和尚。高僧の弟子であり通辞であり象であるところの私は、ねずみと猫の仲裁に立ち会って――。堀江敏幸が「猫の草子」を大胆に換骨奪胎した「象の草子」。言葉遊びと、画家・MARUUによる繊細な象のイラストをお楽しみください。


青山七恵×庄野ナホコ

藤野可織×水沢そら

「心より信じ申し上げております観音さまあ! お約束のとおり、この子に鉢をかぶせますよおおお!!」そう叫ぶなり息絶えてしまった母上。鉢かづきとなった姫は、父上と継母に家を追い出され……。青山七恵が描く新しい女の姿、「鉢かづき」。イラストを担当したのは、多和田葉子『雪の練習生』などで知られる庄野ナホコです。

我々狐にしてみれば、人間の男たちが大喜びする良妻賢母になることなんてお手のものだ! 人間社会をのっとるため、容姿・能力ともに優れた女子に化けるレッスンを受ける狐たち。とりわけ優秀な「きしゆ」は、ついに人間と結婚し……!? 藤野可織「木幡狐」『おはなしして子ちゃん』でお馴染みの水沢そらが、気まぐれな狐を描きます。


日和聡子×ヒグチユウコ

橋本 治×樋上公実子

亀を釣り上げたと告げたその翌日、兄は浦から戻らなかった――。両親とともに残された妹は、ある日海辺で奇妙なものを見つけて……。日和聡子が斬新な角度で切り取る「浦島太郎」の物語、「うらしま」。海中の恐ろしくも美しい世界を、『御命授天纏佐左目谷行』ヒグチユウコのイラストとともにお楽しみください。

母親思いの息子・シジラは、ある日はまぐりを釣り上げる。ムクムク大きくなったそれからは、たいそうな美女があらわれて――!? 橋本治が痛快かつアイロニックに語り直す「はまぐりの草紙」を、樋上公実子の壮麗なイラストが彩ります。


平穏がやぶられる連載第二回

小川洋子「琥珀のまたたき」

年を経るにつれて少しずつ古びてゆく、3きょうだいの住む家。長い雨がついに降りやんだ翌朝、三人は庭の沼を掘り起こす。釘、木の実、ビー玉、コルク。見つけ出したさまざまな「落とし物」を死体の形にして沼に戻したその日こそ、オパールが子供でいられた最後のときだった――。小川洋子の連載小説「琥珀のまたたき」第二回、奇妙でありながらも平穏だった3きょうだいの生活に、少しずつ影がさし始めます。


もくじ

〈カラー保存版 絵本 御伽草子〉

付喪神  町田 康  絵:石黒亜矢子

象の草子  堀江敏幸  絵:MARUU

鉢かづき  青山七恵  絵:庄野ナホコ

木幡狐  藤野可織  絵:水沢そら

うらしま  日和聡子  絵:ヒグチユウコ

はまぐりの草紙  橋本 治  絵:樋上公実子

〈連載小説〉

琥珀のまたたき〔2〕  小川洋子

我々の恋愛〔3〕  いとうせいこう

虚人の星〔8〕  島田雅彦

ビビビ・ビ・バップ〔14〕  奥泉 光

〈連載評論〉

チェーホフとロシアの世紀末〔10〕  沼野充義

〈世界史〉の哲学〔69〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔59〕  穂村 弘

〈随筆〉

パリに氷雨が降るころ  保苅瑞穂

ひとを「選ぶ」?  鷲田清一

かっこいい女  大崎清夏

サンズイの記憶  小森陽一

〈私のベスト3〉

宗教系落語根多  釈 徹宗

アリのお礼参り  丸山宗利

むかし海のそばにあった  河合二湖

〈書評〉

優れた一人称と渡り合う読者の幸せ(『パノララ』柴崎友香)片岡義男

言葉で言葉の裏をかくこと(『愛と人生』滝口悠生)三浦雅士

主人公の資格(『あの子が欲しい』朝比奈あすか)阿部公彦

第三の新人(『キャプテンサンダーボルト』阿部和重・伊坂幸太郎)佐々木 敦

「それでも一人で物語るのは」(『太陽・惑星』上田岳弘)佐藤康智

都市のトポロジーと鏡に映った自己(『エヴリシング・フロウズ』津村記久子)町口哲生

〈創作合評〉

山城むつみ+長嶋 有+松田青子

「持たざる者」金原ひとみ(すばる2015年1月号)

「軽率」中原昌也(文學界2015年1月号)