三島由紀夫の本質に迫る意欲作

三輪太郎「憂国者たち」

天皇陛下万歳と叫んで切腹した三島由紀夫と、国際戦犯法廷でムスリム人の虐殺を問われている元セルビア大統領カラジッチ。二人を結びつける卒論を書こうと力を尽くす女子学生と、それに反発しながら少しずつ右翼に惹かれていく男子学生。二人の若者がとらえる、戦後70年の日本とは――。「憂国者たち」三輪太郎が、三島由紀夫生誕90年・没後45年、そして戦後70年のいまだからこそ描く意欲作です。


戦後70年特別対談 

瀬戸内寂聴×高橋源一郎

今年6月18日に単身上京、国会前で抗議の声を上げた瀬戸内寂聴と、朝日新聞「論壇時評」をまとめた新著『ぼくらの民主主義なんだぜ』が話題の高橋源一郎。作家が発言するのは品がない、とされた時代は終わったのではないか? 戦後70年を迎えた今年、二人が文学と政治を語り合う。


短篇 山田詠美「生鮮てるてる坊主」

津村記久子「粗食インスタグラム」

勝見夫妻は私の友人だ。夫の孝一は親友で、妻の虹子は友達。私は孝一と二人で、頼りない虹子の面倒をみている、そんなつもり。でも虹子には、彼と私の「友情」が理解できないらしくて……。衝撃のラストに戦慄する、山田詠美の短篇「生鮮てるてる坊主」

職場で「判断」ばかりしている私は、決めることに疲れてごはんを考える余力もない。ある時ふと思いついて、夕食を撮影する習慣をつけたところ……。津村記久子の短篇「粗食インスタグラム」、必読です。


連作 川上弘美「変化」

町田 康「ホサナ」

島本理生「雪ト逃ゲル」(後篇)

川上弘美の連作「変化」は、前作「愛」の合わせ鏡のような一篇。際立った「走査」の能力を有するカイラから見る、この世界の真実は?

ようやく車を駐車場の地下3階に停められた私は、私の犬とともに芝居をするため会場を目指す。ところが、髪の薄い男やひょっとこの大群が我々を阻み……。町田康の連作「ホサナ」、私と私の犬はこの窮地を抜け出せるのか?

雪の夜に姿を消した不倫相手。私は回想する。彼と何度も神様の話をしたこと。神父に彼を傷つけているのではと咎められたこと。生まれなかった子どものこと。そして、忘れたつもりでいた父親のこと――。島本理生の連作「雪ト逃ゲル」、後篇を掲載です。


書下ろし作品を抄録

岩阪恵子「私の木下杢太郎」

医学者で詩人。啄木、茂吉らと交遊がありながら名声とは無縁――。美しいものを愛した杢太郎の魅力を丹念に描いた岩阪恵子による評伝「わたしの木下杢太郎」。九月に書下ろしで刊行される本作の冒頭部分を抄録しました。


〈長篇一挙掲載340枚〉

憂国者たち  三輪太郎

〈戦後70年特別対談〉

言葉の危機に抗って  瀬戸内寂聴×高橋源一郎

〈短篇〉

生鮮てるてる坊主  山田詠美

粗食インスタグラム  津村記久子

〈連作〉

変化  川上弘美

ホサナ(11) 町田 康

雪ト逃ゲル(後篇)  島本理生

〈抄録〉

わたしの木下杢太郎  岩阪恵子

〈連載小説〉

オライオン飛行〔7〕  髙樹のぶ子

我々の恋愛〔10〕  いとうせいこう

尻尾と心臓〔14〕  伊井直行

ビビビ・ビ・バップ〔21〕  奥泉 光

〈連載評論〉

鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔20〕  片山杜秀

〈世界史〉の哲学〔75〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔65〕  穂村 弘

〈随筆〉

敗戦から七〇年、八十路の坂を登る  林 京子

輪廻転生  千葉文夫

戦地の外で  福嶋亮大

「やんぐす」のこと  神里達博

資本主義  望月 京

〈私のベスト3〉

私の日帰り温泉  荻野アンナ

ヘンな論文誌  サンキュータツオ

わたしを支えた詩  中江有里

〈書評〉

愛しいけれど気に入らない家畜(『十七八より』乗代雄介)三浦雅士

我に返る、彼に返る――物語の七つ目の神秘(『無名亭の夜』宮下 遼)鴻巣友季子

「手記」と「小説」(『あなたが消えた夜に』中村文則)滝口悠生

世界史概観(『わたしの恋人』上田岳弘)円城 塔

〈創作合評〉

中条省平+野崎 歓+大澤 聡

「ウォーク・イン・クローゼット」綿矢りさ(群像2015年8月号)

「鳥打ちも夜更けには」金子 薫(文藝2015年秋季号)

「屏風の領域」牧田真有子(文學界2015年8月号)