第60回群像新人評論賞には179篇の応募があり、

大澤真幸、熊野純彦、鷲田清一の3氏による選考の結果、

下記のように決定いたしました。

受賞作と受賞の言葉、選評は群像2016年12月号をお読み下さい。

【優秀作】
「不幸と共存――シモーヌ・ヴェイユ試論」
川口好美かわぐち・よしみ

 1987年4月大阪府生まれ。

 東海大学文学部文芸創作学科卒業。

 畜産業。

 北海道在住。

川口好美   受賞のことば

 

 すべての関係者の方々に感謝申し上げたい。掲載するに足るという評価をいただけたことはたいへんありがたいことだと思っている。ただ拙文には、対象にたいする敬虔さが欠けているところ、誤解や拙速な議論等が、あきらかに含まれている。どうせ物書きになるのなら立派な作品で打って出たいなどと考えていたが、そうはならなかった。残念だが、これで良かったのだとも思う。これほど教訓的なことはないからだ。


【優秀作】
「新たな「方法序説」へ――大江健三郎をめぐって」
宮澤隆義みやざわ・たかよし

 1978年1月東京都生まれ。

 早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。

 大学講師。

 東京都在住。

宮澤隆義   受賞のことば

 

 文学や批評を読んでいる時に「このようなことが考えられ、また書かれうるのか」という驚きと共に、囲繞していた壁が破壊される感じを受けたことが、自分にとって言語体験の「原光景」なのだと思う。自分にそのようなことが可能かどうかについてはまったく心許ないし、考える必要もない。ただ、そのことへの渇きがある。優秀作に選ばれたことを励みとして、次に書くべきもののことを考えてゆきたい。