群像2016年11月号

気鋭による野心あふれる中篇

岡本 学「再起動」

誰かの下で働くのなんてごめんだ。そう考えた「僕」は、友人のクォーターを誘って起業する。ITベンチャーの失敗を踏まえ、次に乗り出したのは宗教法人の設立だ。その名も「リブート教」。嫉妬や欲望といった人間の不要な感情を排除し、再起動することを目的とする。でたらめな教義のはずだった、あの時までは……。「再起動」『架空列車』で群像新人文学賞を受賞した岡本学の野心作です。


ついに連作完結

町田 康「ホサナ」

毒虫はびこる恐ろしい世界に来てしまった「私」は、命を救ってくれた男に依頼され、森の奥の犬の集落に向かう。その肉をバーベキューに使うためだ。絶対ごめんだがとにかく行くしかない。そこで「私」が出会ったのは……。町田康「ホサナ」、完結です。


新シリーズ開始

大澤真幸「〈世界史〉の哲学 近代篇」

大澤真幸の好評連載「〈世界史〉の哲学」が新章・近代篇に突入! なぜ資本主義は、イスラーム教圏でも中華文明でもなく、西洋キリスト教圏で生まれ発達したのか? ついにその謎に迫ります。


対談 『オライオン飛行』刊行記念

髙樹のぶ子×佐藤 優

日本人看護婦とフランス人飛行士の恋愛を描いた髙樹のぶ子『オライオン飛行』。刊行を記念し、佐藤優と対談を行いました。史実を基にした本作に隠されたいくつもの物語とは。対談「小説における愛と冒険飛行」、必読です。


連作

藤野可織、黒井千次、李 快成

藤野可織「ピエタとトランジ〈完全版〉」は第3回。雨の降る夜、”名探偵の助手”であり医学生のトランジは、女子寮の自分の部屋に友達の森ちゃんを匿う。森ちゃんは、「自分は殺される」と怯えていて……!?

父親が退院することが決まった。前向きなものか分からないその提案を受け止めた息子は、父親に尋ねられる。ところで、みつかったかね、あの分厚い報告書は――。黒井千次「小さな赤い薔薇」、過去に続く道が少しずつ見えてきます。

別居を始めて以来、愚哲は家族とうまくいかなくなっていた。特に、オートバイが好きで反抗的な次男とは対立してばかりで……。李恢成「地上生活者 第六部 最後の試み」、果たして趙家の運命は。


もくじ

〈中篇180枚〉

再起動  岡本 学

〈連作完結230枚〉

ホサナ  町田 康

〈新シリーズ開始〉

〈世界史〉の哲学 近代篇  大澤真幸

〈対談〉

小説における愛と冒険飛行  髙樹のぶ子×佐藤 優

〈連作〉

ピエタとトランジ〈完全版〉(3)  藤野可織

小さな赤い薔薇  黒井千次

地上生活者 第六部 最期の試み(4)  李 恢成

〈追悼 田中弥生〉

田中弥生さんを追悼する  安藤礼二

〈連載〉

コンテクスト・オブ・ザ・デッド 最終回  羽田圭介

山海記〔6〕  佐伯一麦

いのち〔7〕  瀬戸内寂聴

鳥獣戯画〔9〕  磯﨑憲一郎

〈連載評論〉

美と倫理とのはざまで カントの世界像をめぐって 最終回  熊野純彦

言語の政治学〔4〕  三浦雅士

新・私小説論〔9〕  佐々木 敦

〈連載〉

モンテーニュの書斎〔12〕  保苅瑞穂

現代短歌ノート〔78〕  穂村 弘

〈随筆〉

本人を笑う  南 伸坊

キノコ兵器化計画の顛末  星野 保

リジェクション・スリップ  吉田恭子

月下美人  夜釣十六

〈私のベスト3〉

カフェの名前  川口葉子

98歳になって思い出すこと  竹浪正造

今、会いたい“美しい”ひと  たかまつなな

〈書評〉

飛行機はどこを飛ぶのか(『オライオン飛行』髙樹のぶ子)高橋源一郎

「義経、マジで、そこにいた」(『ギケイキ 千年の流転』町田 康)戌井昭人

ブルックナーの音楽は彼らの生きづらさを肯定するか(『不機嫌な姫とブルックナー団』高原英理)矢野利裕

〈創作合評〉

片岡義男+野崎 歓+石田 千

「カブールの園」宮内悠介(文学界2016年10月号)

『オライオン飛行』髙樹のぶ子(講談社)