群像2017年6月号

中篇200枚

高橋弘希「日曜日の人々(サンデー・ピープル)」

亡くなった従姉から届けられた紙の束。意味不明の文面から浮かびあがるのは、彼女が生前出入りしていたサークル──REMの存在だった。抑えきれない衝動を抱える若者たちの傷を描く、渾身の意欲作! 高橋弘希「日曜日の人々(サンデー・ピープル)」


第60回群像新人文学賞発表

優秀作 「天袋」上原智美

優秀作 「独舞」李 琴峰

第60回群像新人文学賞が決定しました。

優秀作 「天袋」上原智美

〈あの人〉に棄てられ、行き所を失い、かつて学生時代にすんでいたアパートの一室に忍び込んだ主人公。その部屋の天袋に潜んで暮らし始め、住人亜美に知られることなく寄生した奇妙な3ヵ月。

優秀作 「独舞」李 琴峰

台湾で育ち、日本の企業で働く趙迎梅。彼女はレズビアンであることを隠して暮らしていた。友人の死、レイプ、恋人からの非情な仕打ち──。二つの言語のあいだをさまよう、性的マイノリティの壮絶な半生。


新連載第2回

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」

堀江敏幸の新連載「二月のつぎに七月が」は第2回。「いちば食堂」の常連、阿見さんの父親は従軍中に亡くなった。父が遺した八冊の文庫本。それをコートのポケットに忍ばせ、阿見さんはいつも持ち歩いていた……。


多和田葉子、橋本 治、佐々木 敦

多和田葉子「地球にちりばめられて」は第7回。HIrukoたちがいるオスローに向かうはずのクヌートだったが、母親もオスローに行くと言い出して……。橋本治「九十九歳になった私」は第9回。いつのまにか九十九歳になってしまった私。退屈な日々は変わらないようで……。佐々木敦「新・私小説論」はいよいよ佳境の第15回。前回から引き続き、柴崎友香と山下澄人を論じます。



もくじ

〈中篇200枚〉

日曜日の人々(サンデー・ピープル)

              高橋弘希

〈第60回群像新人文学賞発表〉

〈優秀作〉

天袋       上原智美

独舞       李 琴峰  

受賞のことば

選評 青山七恵 高橋源一郎 多和田葉子 

   辻原 登 野崎 歓

〈連載〉

二月のつぎに七月が〔2〕  堀江敏幸

地球にちりばめられて〔7〕  多和田葉子

九十九歳になった私〔9〕  橋本 治

鳥獣戯画〔16〕  磯﨑憲一郎

〈連載評論〉

たましいを旅するひと──河合隼雄〔5〕 若松英輔

言語の政治学〔11〕  三浦雅士

新・私小説論〔15〕  佐々木 敦

〈連載〉

現代短歌ノート〔85〕  穂村 弘

〈随筆〉

その夏のジュジュ  福嶋伸洋

音楽離れ脱却のヒント  蔦谷好位置

ダニーと紺碧の海、演出ノート  藤田俊太郎

妹の話  高田かや

〈私のベスト3

心の栄養 ご当地食  菅原佳己

歯ブラシは毛先を直角に  斉藤斎藤

ディズニーアニメのなかの親子  鴻池留衣

〈書評〉

ハードボイルド探偵の冒険(『百年の散歩』多和田葉子)阿部公彦

介護の現実とサーガ(『どんぶらこ』いとうせいこう)瀧井朝世

ことばに心を染める(『R.S.ヴィラセニョール』乙川優三郎)倉本さおり

光が丘の子ども(『彼女は鏡の中を覗きこむ』小林エリカ)佐藤康智

〈創作合評〉

辻原 登+中条省平+谷崎由依

「アフリカの愛人」旦 敬介(新潮2017年5月号)

「リバーサイド」太田靖久(群像2017年5月号)

「意識のリボン」綿矢りさ(すばる2017年5月号)