群像2017年10月号

中篇146枚

西村賢太「夜更けの川に落葉は流れて」

齢二十三、四。すべてに無気力で受動的な北町貫多をやや向日的な世界へと引き戻したのは、バイト先で出会った梁木野佳穂という女性だった。四人目となる異性との交際はうまくいくかに思われたが――。著者の原点を炙り出し、新境地を拓く新たな代表作。西村賢太の中篇146枚「夜更けの川に落葉は流れて」


新連載

三浦佑之「出雲神話論 第1回 制圧されたオホクニヌシ」

古事記の43%を占める出雲を舞台にした神話。その中でも出雲平定神話は「国譲り」と呼ばれてきたが、この言葉、実は古事記にも日本書紀にも出て来ない。これは一体、何を隠蔽しているのか。虚心に古事記テクストに向きあうとき、「出雲の滅亡」の姿が見えてきた。三浦佑之の新連載「出雲神話論」


中篇126枚

中村太郎「慎ましく世界を破壊すること」

娯楽小説の某名匠が覆面で放つ“秘蔵”野心作。「絶望するのに相応しい時がきた気がする」と言って消えた女――。彼女を探すうち、僕は、僕とは違う女を探す醜貌の中年男と出会う。その女が男の「大事なもの」を持っているという。そして僕は男とともに奇妙な探索に乗り出す。中村太郎の中篇126枚「慎ましく世界を破壊すること」


特別鼎談

多和田葉子×和合亮一×開沼 博「ベルリン、福島〜あの日から言葉の灯りをさがして」

震災から6年。原発事故をきっかけに露わになった日本の現実。フィクションとノンフィクション、詩と小説を巡って言葉が交錯する。不条理な現実に言葉は立ち向かえるのか――福島と日本、世界の現在を問う対話の記録。多和田葉子×和合亮一×開沼
博の特別鼎談「ベルリン、福島~あの日から言葉の灯りをさがして」


連続対談

いとうせいこう「今夜、笑いの数を数えましょう」

笑いとは何か? をテーマに、毎回各界で活躍するゲストを招き、トークバトルを繰り広げる。第2回のゲストはケラリーノ・サンドロヴィッチ。お互いの笑いの体験遍歴を軸に、新たな「笑いの定義」の策定に挑む!いとうせいこうの連載対談シリーズ「今夜、笑いの数を数えましょう」


もくじ

〈中篇126枚〉

夜更けの川に落葉は流れて    西村賢太

〈中篇126枚〉

慎ましく世界を破壊すること   中村太郎

〈新連載〉

出雲神話論 第1回 制圧されたオホクニヌシ

                三浦佑之  

〈特別鼎談〉

ベルリン、福島              〜あの日から言葉の灯りをさがして

      多和田葉子×和合亮一×開沼 博

〈連続対談〉

今夜、笑いの数を数えましょう 

 いとうせいこう 第2回ケラリーノ・サンドロヴィッチ

〈連作〉

梅雨のおとずれ        古井由吉

〈連作評論〉

大拙〔6〕           安藤礼二

〈長篇評論〉

上演の想像力             ──戯曲に見る三島由紀夫の生と劇〈中篇〉

               青木純一

〈リレーエッセイ「私と大江健三郎」〉

忠義と功業          加藤典洋

〈連載小説〉

二月のつぎに七月が〔5〕  堀江敏幸

山海記〔13〕  佐伯一麦

〈連載評論〉

人間とは何か                   ──フランス文学による感情教育──〔3〕中条省平

たましいを旅するひと──河合隼雄〔8〕 若松英輔

〈世界史〉の哲学〔96〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔89〕  穂村 弘

〈随筆〉

スナックのヤバい話  谷口功一

嚙み合わないお喋り  睡蓮みどり

ムーンライト伝説  畠山丑雄

〈私のベスト3

「役に立たない機械」の世界  中谷礼仁

スー女が応援する9月場所の力士  和田靜香

来たるべき改元に向けて  鈴木洋仁

〈書評〉

死の欲動に対抗しうるもの(『日曜日の人々』高橋弘希)江南亜美子

その「ほし」はこの「ほし」でもある(『ほしのこ』山下澄人)佐々木 敦

重力と無重力のあいだ(『塔と重力』上田岳弘)矢野利裕

性と生殖の壁の向こう側(『囚われの島』谷崎由依)清水良典

〈創作合評〉

島田雅彦+阿部公彦+倉本さおり

「雪子さんの足音」木村紅美(群像2017年9月号)

「湖畔の愛」町田 康(新潮2017年9月号)

「その八重垣を」三輪太郎(群像2017年9月号)