群像2017年12月号

短篇

町田 康「とりあえずこのままいこう」

死んでもなぜか意識が残っていて、私は家の人が嘆き悲しむ様子を、そのかたえに居て眺めていた――。犬だった私は猫に生まれ変わって元の家に戻る。忠実だった私は次第に気ままに振る舞いだし、家の人と新たな関係を結ぶのだが──。町田康の短編「とりあえずこのままいこう」


対談

磯﨑憲一郎×中島岳志「「与格」がもたらした小説」

小説の「私」は、「言葉」は、どこからやってくるのか。小説はいかにして「作者」をも超えていくのか。小説『鳥獣戯画』をめぐり、書き手すら意図しなかった核心が対話によって明らかにされる。磯﨑憲一郎×中島岳志の対談「「与格」がもたらした小説」


対談

滝口悠生×堀江敏幸「「語り手」の声に耳をすまして」

「書き手」でありながら「語り手」の声を聞く。そこにないものについて語るり、ないからこそ語りたくなる──。「魂の締め切り」に向けて書き続けられた新刊『高架線』が生まれたとき、滝口悠生がつかんだ創作の手がかり。二人の作家が対話を通して迫る小説が生まれる瞬間。滝口悠生×堀江敏幸対談「「語り手」の声に耳をすまして」


第61回 群像新人評論賞決定!

当選作「なぜシャーロック・ホームズは「永遠」なのか──コンテンツツーリズム論序説」石橋正孝

第61回群像新人評論賞が、選考委員・大澤真幸、熊野純彦、鷲田清一によって決定しました。新しい評論賞が創設されてから、初めて当選作を選出! 受賞作は石橋正孝「なぜシャーロック・ホームズは「永遠」なのか──コンテンツスーリズム論序説」。シャーロッキアンにおける「ラインバッハの森」に代表される「聖地巡礼」の旅は何を意味するのか? 新しい才能の誕生をぜひご確認ください。


評論 宮澤隆義「必然性の転移──三島由紀夫と武田泰淳」

いま批判的に問うべきなのは「歴史の必然性」ではなく「歴史の偶然性」にある――。「ビッグ・ヒストリー」ものの流行は何を意味するのか。二人の作家が書いた長編小説から「現実」を問う。第60回群像新人評論賞(優秀作)受賞第一作。宮澤隆義の評論「必然性の転移──三島由紀夫と武田泰淳」


もくじ

〈短篇〉

とりあえずこのままいこう    町田 康

〈対談〉

「与格」がもたらした小説

          磯﨑憲一郎×中島岳志

〈対談〉

「語り手」の声に耳をすまして                   滝口悠生×堀江敏幸    

〈第61回群像新人評論賞発表〉

〈当選作〉

なぜシャーロック・ホームズは「永遠」なのか──コンテンツツーリズム論序説   石橋正孝                   

〈評論〉

必然性の転移──三島由紀夫と武田泰淳

               宮澤隆義                                

〈連作〉

その日のうちに        古井由吉

階段の途中で         黒井千次

地上生活者 第六部 最後の試み

               李 恢成                      

〈リレーエッセイ「私と大江健三郎」〉

大江さんのこと        島田雅彦

〈連載小説〉

人外(にんがい)〔2〕  松浦寿輝

二月のつぎに七月が〔8〕  堀江敏幸

〈連載評論〉

出雲神話論〔3〕  三浦佑之

人間とは何か                   ──フランス文学による感情教育──〔5〕中条省平

たましいを旅するひと──河合隼雄〔10〕 若松英輔

〈世界史〉の哲学〔98〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔91〕  穂村 弘

〈随筆〉

「ドン・キホーテ」の著者、林紓           ミカエル・ゴメズ・グタールト 田中未来 訳

昭和への郷愁  岡本和明

ドラマ気分  小佐野 彈

雨の行方  中野美月

ここではないどこか  玉城ティナ

〈私のベスト3

三つの「漂流物」  小澤京子

こども時代の噓  小川 哲

〈書評〉

ハシゴの上と下                 (『新しい小説のために』佐々木 敦)阿部公彦

源氏物語現代語訳の系譜のなかで         (『源氏物語 上』角田光代)高木和子

哲学による社会学への誘い            (『憎悪と愛の哲学』大澤真幸)鈴木洋仁

地図が領土になるとき              (『双子は驢馬に跨がって』金子 薫)野崎 歓

〈創作合評〉

佐々木 敦+木村紅美+佐藤康智

「故郷」松波太郎(群像2017年11月号)

「流光」李 琴峰(群像2017年11月号)

「小説禁止令に賛同する」いとうせいこう      (すばる2017年11月号)