群像2018年11月号

歳時創作シリーズ 捌 季・憶 Ki-Oku 8 松浦寿輝「地始凍」 柳 美里「朔風払葉」 堀江敏幸「熊蟄穴」

樹木は葉を落とし、地上の視界は奥行きを増す。冬の静けさは空のはて、宇宙と時間の広がりを夢想させる。作家の想像力で繫ぐひととせ――二十四節気七十二候――の季節の記憶。一年をとおした好評読み切り掌篇大特集、堂々完結。松浦寿輝「地始凍」(ちはじめてこおる)、柳美里「朔風払葉」(きたかぜこのはをはらう)、堀江敏幸「熊蟄穴」(くまあなにこもる)


創作 金子薫「壺中に天あり獣あり」

言葉によって造られる迷宮のなか、光は当て所なく歩き続けていた――迷宮に幽閉された登場人物たちは外に憧れ、模倣し、想像力を頼りに自らの世界を築こうとする。本誌初登場の気鋭、小説とは何かを問う野心作。金子薫「壺中に天あり獣あり」(220枚)


新連載 佐々木敦「全体論と有限 ーひとつの「小説」論ー」

今すでにここには何もかもの全てがあり、「全て」がある――これは来たるべき「小説」のプログラム。『新しい小説のために』をさらに深化させる批評家の新たな試み。小説の、思考の可能性を広げる、佐々木敦の渾身の新連載評論「全体論と有限 ―ひとつの「小説」論―」


特別対談 高橋源一郎×平田オリザ「滅びゆく文学、しぶとい文学」

戦後文学はなぜかくも読まれなくなったのか。戦後文学のような道を、純文学も進むのか。『今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇』をめぐって、演劇と小説の両岸から、日本社会の問題をも包括した刺激的な対話が始まる。高橋源一郎×平田オリザの特別対談「滅びゆく文学、しぶとい文学」


連続対談完結 いとうせいこう「今夜、笑いの数を数えましょう」(第六回 きたろう)

笑いとは何か? をテーマに、毎回各界で活躍するゲストを招き、トークバトルを繰り広げるいとうせいこうの連載対談シリーズ「今夜、笑いの数を数えましょう」がついに最終回。ゲストは「師匠」である、きたろう。お互いの笑いの体験遍歴を軸に、新たな「笑いの定義」の策定に挑む!


もくじ

〈歳時創作シリーズ 捌〉季・憶 Ki-Oku

地始凍(ちはじめてこおる)  松浦寿輝

朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)  柳 美里

熊蟄穴(くまあなにこもる)  堀江敏幸

〈創作220枚〉

壺中に天あり獣あり  金子 薫

〈新連載評論〉

全体論と有限 ーひとつの「小説」論ー  佐々木 敦

〈特別対談〉

滅びゆく文学、しぶとい文学  高橋源一郎×平田オリザ

〈連続対談完結〉

今夜、笑いの数を数えましょう  

  いとうせいこう 第六回 きたろう   

〈連載完結〉

人外(にんがい)  松浦寿輝

〈連載〉

その日まで〔4〕  瀬戸内寂聴

湘南夫人〔4〕  石原慎太郎

鉄の胡蝶は歳月に夢に記憶を彫るか〔4〕  保坂和志

帝国の黄昏〔6〕  花村萬月

御社のチャラ男〔7〕 絲山秋子

おおきな森〔11〕  古川日出男

ブロークン・ブリテンに聞け〔9〕 ブレイディみかこ


レンマ学〔10〕  中沢新一

出雲神話論〔14〕  三浦佑之

人間とは何か                  ──フランス文学による感情教育──〔16〕中条省平

〈世界史〉の哲学〔109〕  大澤真幸

現代短歌ノート〔102〕  穂村 弘

〈随筆〉

KY園芸百科  伊藤比呂美

くぐる  藤代 泉

前橋での読書会  上原 隆

流され  渡辺恭彦

〈書評〉

文学の「言葉」の生まれる所(『今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇』高橋源一郎)  富岡幸一郎

おとぎ話が跳ねる経験とレトロ未来(『ハレルヤ』保坂和志)  古谷利裕

ポハピピンポボピア星人は恋するか(『地球星人』村田沙耶香)  加藤典洋

「秘密の花園」にたどり着くために(『ブルーハワイ』青山七恵)  安藤礼二

〈創作合評〉

大竹昭子×清水良典×岩川ありさ

「鳥居」石田 千(文學界2018年10月号)

「象牛」石井遊佳(新潮2018年10月号)

「春、死なん」紗倉まな(群像2018年10月号)