群像2019年10月号

巻頭特集 

大江健三郎の〈現代性〉Ⅰ

「大江健三郎全小説」がついに完結。さまざまな著者による大江文学の「読み直し」は、現代社会のリ・マッピングにつながっていた。未来に読み継ぐための指針となる論考を、ふた月にわたりお届けする。巻頭特集 大江健三郎の〈現代性〉Ⅰ 安藤礼二「純粋天皇の胎水」 宇野重規「祈り、テキスト、習慣――大江健三郎と現代日本の精神性」 尾崎真理子「予言者としての大江――「全小説」解説を書き終えて」


創作 

石原慎太郎「愛の迷路」

僕にはあれしかありはしない。『太陽の季節』『亀裂』『若い獣』に列する、作家の中核をなす”拳闘”――そして”恋愛”小説の最前線。石原慎太郎の創作「愛の迷路」


創作 

倉数茂「百の剣(つるぎ)」 太田靖久「アフロディーテの足」

「真希」のことばかり考えるようになってから半年くらいになる。会ったことはないし、どんな顔をしているのかもわからない。ネットの「手記」を手がかりに、「わたし」は夢想する――。倉数茂の創作「百の剣(つるぎ)」。彼女の幸せを祝える男でいたい――。冴えない中年男の悲哀をスピーディな文体で描きだす。太田靖久の創作「アフロディーテの足」


新連載評論 

三浦哲哉「LA・フード・ダイアリー」 

サバティカルのため、家族とともにアメリカに降り立った私を待ち受けた現実――気鋭の映画研究者・批評家による、アメリカ・レポート。三浦哲哉の新連載評論「LA・フード・ダイアリー」 


論点 

保阪正康 吉田徹 小田原のどか

今月の「群像」の論点として、保阪正康「天皇の歴史意識」、吉田徹「ポピュリズムとなかまたち――山本太郎はひとりなのか」、小田原のどか「彫刻とはなにか――「あいちトリエンナーレ2009」が示した分断をめぐって」を掲載。


もくじ

〈巻頭特集〉

大江健三郎の〈現代性〉Ⅰ

純粋天皇の胎水  安藤礼二

祈り、テキスト、習慣――大江健三郎と現代日本の精神性  宇野重規

予言者としての大江――「全小説」解説を書き終えて 尾崎真理子

〈創作〉

愛の迷路  石原慎太郎

百の剣  倉数 茂

アフロディーテの足 太田靖久

〈新連載評論〉

LA・フード・ダイアリー 三浦哲哉

〈論点〉

天皇の歴史意識  保阪正康

ポピュリズムとなかまたち――山本太郎はひとりなのか  吉田 徹

彫刻とはなにか――「あいちトリエンナーレ2019」が示した分断をめぐって  小田原のどか

〈連載完結〉

星に仄めかされて〔10〕  多和田葉子

〈鼎談シリーズ〉

徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術 第二回「世界内戦1.0」  松浦寿輝×沼野充義×田中 純  

〈連載〉

その日まで〔13〕  瀬戸内寂聴

チーム・オベリベリ〔11〕  乃南アサ

鉄の胡蝶は記憶に歳月の夢に彫るか〔15〕  保坂和志

帝国の黄昏〔15〕  花村萬月

おおきな森〔22〕   古川日出男

ブロークン・ブリテンに聞け Listen to Broken Britain〔20〕ブレイディみかこ

愚行の賦〔3〕  四方田犬彦

全体論と有限 ーひとつの「小説」論ー〔11〕 佐々木 敦

人間とは何か──フランス文学による感情教育──〔27〕   中条省平

〈世界史〉の哲学〔119〕  大澤真幸

現代短歌ノート〔113〕  穂村 弘

〈随筆〉   

「フェイクニュースは私だ」  瀬戸夏子

生産性に抗するラディカルな生  木澤佐登志

お腹を空かせた子どもたち  渡辺由美子

フォーク並びとポピュリズム  綿野恵太

〈書評〉

幼年期と山のむこう(『いかれころ』三国美千子)  長﨑健吾

ジキルとハイドの肌触り(『生のみ生のままで』綿矢りさ)  阿部公彦  

私はいかにして私で在り続けるか(『緋の河』桜木紫乃)  武田砂鉄

静謐なる狂気――虚構と身体性のリアル(『窓の外を見てください』片岡義男)  諏訪哲史

〈創作合評〉 

藤野千夜×大澤 聡×矢野利裕

「夜の底の兎」木村紅美(「群像」2019年9月号)

「語り手たち」間宮 緑(「群像」2019年9月号)

「音に聞く」高尾長良(「文學界」2019年9月号)