群像2021年9月号

【新連載】村田喜代子【中篇】李 龍徳【連作完結】松浦理英子

巻頭は村田喜代子さんによる新連載「新「古事記」an impossible story」です。第二次大戦下のアメリカ、どの州にも属さない「Y地」と呼ばれる研究所がある街で物語が始まります。

李龍徳さんの中篇一挙掲載「石を黙らせて」は、野間文芸新人賞受賞後第一作。許されざる罪を犯した男を描く問題作です。

一昨年から不定期で掲載されてきた松浦理英子さんの連作「ヒカリ文集」がついに完結。劇団員6人が恋をしたヒカリとの日々を振り返る文集が、完成の時を迎えます。


【小特集「翻訳と」】ジョン・フリーマン 柴田元幸 阿部大樹 辛島デイヴィッド 斎藤真理子 関口涼子 築地正明 古市真由美 古屋美登里 行方昭夫 平石貴樹

小特集「翻訳と」は、「群像」で論点やエッセイを発表してきたジョン・フリーマンさんの詩集『公園』から5篇を、柴田元幸さんが翻訳・解説した創作に始まり、阿部大樹さん、辛島デイヴィッドさん、斎藤真理子さん、関口涼子さん、築地正明さん、古市真由美さん、古屋美登里さんに翻訳にまつわる批評/エッセイを、結びは6月にヘンリー・ジェイムズ『ロデリック・ハドソン』を文芸文庫で新訳刊行した、翻訳歴60年の行方昭夫さんの、平石貴樹さん聞き手によるインタビューという充実のラインナップです。


【小特集「戦争の」】川崎 徹 木村朗子 久保田智子 諏訪部浩一 保阪正康 井上 亮

小特集「戦争の」は、映画『日本のいちばん長い日』を軸にした川崎徹さんの創作「光の帝国」に、木村朗子さん、久保田智子さん、諏訪部浩一さんによる批評/エッセイが続きます。井上亮さん聞き手による保阪正康さんインタビューでは、「戦争」を中心に、半藤一利さんと立花隆さんについてお話しいただきました。


【芥川賞受賞記念】石沢麻依

第64回群像新人文学賞の当選作となった石沢麻依さん『貝に続く場所にて』が、第165回芥川龍之介賞を受賞しました。受賞を記念して石沢さんに「15の問い」についてお答えいただきました。


【ノンフィクション】石戸 諭【批評】樫村晴香 三浦哲哉

ノンフィクションは、石戸諭さん「2011-2021視えない線の上で 長いエピローグ」。これまで掲載されてきたものを集めた単行本は2021年秋に刊行予定です。

批評は樫村晴香さんの読み切り「タルコフスキーの〈奇跡〉」と、三浦哲哉さんによる「『ドライブ・マイ・カー』の奇跡的なドライブ感について」。『ドライブ・マイ・カー』は、カンヌ映画祭で脚本賞を受賞しました。


もくじ

〈新連載〉

新「古事記」an impossible story  村田喜代子

〈中篇〉

石を黙らせて  李 龍徳

〈連作完結〉

ヒカリ文集〔5〕  松浦理英子

〈芥川賞受賞記念〉

石沢麻依への15の問い

〈翻訳と〉

〈詩〉

『公園』より五篇 犠牲/元バスケットボール選手たち/終夜営業/冬の日記/世界の果てのディナー  ジョン・フリーマン 柴田元幸 訳

〈批評/エッセイ〉

アメリカと祖父のシベリア  阿部大樹

川上弘美と七人の英訳者たち  辛島デイヴィッド

物語の足場を探る  斎藤真理子

料理の物語を聞かせて  関口涼子

言葉の韻律に耳を澄ます――古井由吉と翻訳  築地正明

マイナーと呼ばれて  古市真由美

フィクションとノンフィクションを翻訳する  古屋美登里

〈文芸文庫通信拡大版/インタビュー〉

読みやすい翻訳で「作家らしさ」を伝える  行方昭夫 聞き手・平石貴樹

〈戦争の〉

〈創作〉

光の帝国  川崎 徹

〈批評/エッセイ〉

現在完了形の近未来――津島佑子『あまりに野蛮な』を読む  木村朗子

1945ひろしまタイムラインから考えたこと  久保田智子

Thank You for Your Service――アメリカ戦争小説の系譜  諏訪部浩一

〈インタビュー〉

戦争体験の継承とノンフィクションの地平――半藤一利さんと立花隆さんの残したもの  保阪正康 聞き手・井上 亮

〈ノンフィクション〉

2011-2021 視えない線の上で 長いエピローグ  石戸 諭

〈批評〉

タルコフスキーの〈奇跡〉  樫村晴香

『ドライブ・マイ・カー』の奇跡的なドライブ感について  三浦哲哉

〈article〉

2021年前半戦 MLB、NPB観戦日記  高山羽根子

〈最終回〉

戒厳〔10〕  四方田犬彦

〈コラボ連載〉

DIG 現代新書クラシックス〔9〕「教養書を読む」とはどういうことか?  山野弘樹

〈連載〉

水納島再訪〔2〕  橋本倫史

はぐれんぼう〔14〕  青山七恵

ゴッホの犬と耳とひまわり〔20〕  長野まゆみ

鉄の胡蝶は記憶は夢に歳月に彫るか〔37〕  保坂和志

二月のつぎに七月が〔38〕  堀江敏幸

ケアする惑星〔2〕  小川公代

食客論〔3〕  星野 太

世界と私のA to Z〔5〕  竹田ダニエル

言葉の展望台〔5〕  三木那由他

スマートな悪 技術と暴力について〔6〕  戸谷洋志

こんな日もある 競馬徒然草〔7〕  古井由吉

旋回する人類学〔7〕  松村圭一郎

ポエトリー・ドッグス〔8〕  斉藤 倫  

マルクスる思考〔11〕  斎藤幸平

現代短歌ノート二冊目〔12〕  穂村 弘

日常の横顔〔11〕  松田青子

日日是目分量〔13〕  くどうれいん  

歴史の屑拾い〔17〕  藤原辰史

「近過去」としての平成〔18〕  武田砂鉄

「ヤッター」の雰囲気〔18〕  星野概念

星占い的思考〔18〕  石井ゆかり

辺境図書館〔19〕  皆川博子

国家と批評〔17〕  大澤 聡

〈世界史〉の哲学〔135〕  大澤真幸

文芸文庫の風景〔9〕  大山 海

極私的雑誌デザイン考〔20〕  川名 潤

〈随筆〉

俺が殺してきた奴らの群像  東 千茅

三十一センチ  平岡直子

〈書評〉

『アンソーシャル ディスタンス』金原ひとみ  郷原佳以

『最後の挨拶 His Last Bow』小林エリカ  小竹由美子

『マチズモを削り取れ』武田砂鉄  西口 想

『植物忌』星野智幸  長瀬 海

『枝の家』黒井千次  三浦雅士

〈創作合評〉

「教育」遠野 遥

「ブラックボックス」砂川文次

「祈りの痕」中西智佐乃

高山羽根子×倉本さおり×矢野利裕