群像2021年11月号

創刊75周年記念号②【短篇】筒井康隆「コロナ追分」

3ヵ月連続でお届けしている「創刊75周年記念号」第2弾です。

第2弾の巻頭は、筒井康隆さんの短篇「コロナ追分」です。お前はどっちへお行きやる、ここはコロナの別れ道。生真面目を反骨精神で笑い飛ばす不謹慎文学!


【新連作】柴崎友香「帰れない探偵」【中篇】舞城王太郎 須賀ケイ

柴崎友香さんの新連作小説がスタート! 「帰れない探偵」が通しタイトルで、3ヵ月おきの掲載予定です。

今年でデビュー20周年を迎えた舞城王太郎さんの中篇「ドアドアドアド」は、舞城ワールドの新境地。タイトル扉の文字や中の図は舞城さん直筆です。

須賀ケイさんの中篇「木の匙」は、「食」を通して人間を見つめる問題作です。


【短篇饗宴】上田岳弘 片岡義男 川上弘美 皆川博子

影響力を有する者だけが人間に戻れる。ロボット未満の人間さん、君はどうかな?(上田岳弘「Automata」

啓子が初めて訪れたバーには、姫百合が活けられ、カウンターの中にひとりの女性が座っていた。(片岡義男「花街のまんなか」

「住所録だったんだよね」。十年ぶりに会ったマーヤは、前置きなしに語り始めた。(川上弘美「二番めに大切なものを賭ける」

時間は死なない。死んだのはわたし。《わたし》は時間で形成されている。わたしはサンルームの籐椅子に凭れている。(皆川博子針」


【批評】梶谷 懐 片岡大右 平石貴樹 森山 恵

権威主義的国家の台頭は、民主主義の敗北をもたらすのか? 対話への試み。(梶谷 懐「政治制度と「文化」――新型コロナウィルスへの対応をめぐって」

『鬼滅の刃』をケア、マザリング、エンパシーを通して見つめるとき、人間本性の核心が浮かび上がる。(片岡大右「『鬼滅の刃』とエンパシーの帝国」

ヨクナパトーファ・サーガ第一作を書きながら、若きフォークナーは何を発見したのか。(平石貴樹「愛することは学ぶことだから――『土にまみれた旗』を読む」

90年前に誕生したウルフの傑作『波』が纏う水のイメージ、詩性とは。新訳版の訳者による詩的論考。(森山 恵「水のことば、詩のことば――ヴァージニア・ウルフ『波』を翻訳して」


【インタビュー】吉田修一 【シンポジウム】京都文学レジデンシー

作品集『オリンピックにふれる』を刊行した吉田修一さんのインタビュー「不定形な時代を描く」。過去を振り返ることで見えてくる「いま」の姿。聞き手は陣野俊史さんです。

藤野可織さん、谷崎由依さん、カルドネル佐枝さん、吉田恭子さん、澤西祐典さん(司会)で行われたシンポジウムの模様を掲載。「京都レジデンシー」の意義とヴィジョンとは。構成は江南亜美子さんです。


もくじ

創刊75周年記念号②

〈巻頭創作〉

コロナ追分  筒井康隆

〈創作〉

〈新連載〉

帰れない探偵 雨に歌えば  柴崎友香

〈中篇一挙〉

ドアドアドアド  舞城王太郎

木の匙  須賀ケイ

〈短篇饗宴〉

Automata  上田岳弘

花街のまんなか  片岡義男

二番めに大切なものを賭ける  川上弘美

針  皆川博子

〈批評〉

政治制度と「文化」――新型コロナウィルスへの対応をめぐって  梶谷 懐

『鬼滅の刃』とエンパシーの帝国  片岡大右

愛することは学ぶことだから――『土にまみれた旗』を読む  平石貴樹

水のことば、詩のことば――ヴァージニア・ウルフ『波』を翻訳して  森山 恵

〈インタビュー〉

不定形な時代を描く――『オリンピックにふれる』刊行記念インタビュー  吉田修一 聞き手・陣野俊史

〈シンポジウム〉

京都文学レジデンシーとは何か  藤野可織 谷崎由依 カルドネル佐枝 吉田恭子 澤西祐典(司会) 江南亜美子(構成)

〈論点〉

ニュースとリテラシー  石戸 諭

誰でもよいあなたへ――ジャン=リュック・ナンシーからの投壜通信  伊藤潤一郎

署名をアップデートする――Change.orgのケースを通して  武村若葉

〈追悼・色川大吉〉

「民衆史」とそのゆくえ  大門正克

〈コラボ連載〉

DIG 現代新書クラシックス〔11〕創造の共同体  水越 伸

〈連載〉

太陽諸島〔2〕  多和田葉子

新「古事記」an impossible story〔3〕  村田喜代子

はぐれんぼう〔16〕  青山七恵

ゴッホの犬と耳とひまわり〔22〕  長野まゆみ

鉄の胡蝶は記憶は夢に歳月に彫るか〔39〕  保坂和志

地図とその分身たち〔2〕  東辻賢治郎

ケアする惑星〔4〕  小川公代

食客論〔4〕  星野 太

世界と私のA to Z〔7〕  竹田ダニエル

言葉の展望台〔7〕  三木那由他

スマートな悪 技術と暴力について〔8〕  戸谷洋志

こんな日もある 競馬徒然草〔9〕  古井由吉

旋回する人類学〔9〕  松村圭一郎

ポエトリー・ドッグス〔10〕  斉藤 倫  

マルクスる思考〔13〕  斎藤幸平

現代短歌ノート二冊目〔14〕  穂村 弘

日日是目分量〔15〕  くどうれいん

Nの廻廊〔9〕  保阪正康

薄れゆく境界線 現代アメリカ小説探訪〔17〕  諏訪部浩一  

歴史の屑拾い〔19〕  藤原辰史

「近過去」としての平成〔20〕  武田砂鉄

「ヤッター」の雰囲気〔20〕  星野概念

星占い的思考〔20〕  石井ゆかり

〈世界史〉の哲学〔137〕  大澤真幸

文芸文庫の風景〔11〕  大山 海

〈随筆〉

引退  金子茂樹

在宅と在宅の狭間にて  杉本裕孝

残土と土壌  能作文徳

はまぐりの話  山家 望

〈書評〉

『旅のない』上田岳弘  角幡唯介

『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』川本 直  山﨑修平

『カミュ伝』中条省平  田中未来

『ハロー、ユーラシア 21世紀「中華」圏の政治思想』福嶋亮大  木澤佐登志

『天路』リービ英雄  岩川ありさ

〈創作合評〉

「オオカミの」高橋源一郎

「皆のあらばしり」乗代雄介

「盗森のよる」早助よう子

高山羽根子×倉本さおり×矢野利裕