第140回芥川賞受賞!!

「ポトスライムの舟」津村記久子

私は働く。お金のために。無駄な時間を作らないために。

―――でも何のために生きているのか

“女たちの世界”を舞台に、

働くこと、生きることの意味を問う、あらたなる代表作。

たぶん自分は先週、こみ上げるように働きたくなくなったのだろうと他人事のように思う。工場の給料日があった。弁当を食べながら、いつも通りの薄給の明細を見て、おかしくなってしまったようだ。『時間を金で売っているような気がする』というフレーズを思いついたが最後、体が動かなくなった。働く自分自身にではなく、自分を契約社員として雇っている会社にでもなく、生きていること自体に吐き気がしてくる。時間を売って得た金で、食べ物や電気やガスなどのエネルギーを細々と買い、なんとか生き長らえているという自分の生の頼りなさに。それを続けなければいけないということに。(――本文より)


津村記久子

1978年生まれ。小説家。大谷大学文学部国際文化学科卒業。 2005年、津村記久生名義で投稿した「マンイーター」(単行本化にあたり「君は永遠にそいつらより若い」に改題)で第21回太宰治賞を受賞し小説家デビュー。『ミュージック・ブレス・ユー!!』(角川書店)で第30回野間文芸新人賞受賞。著書に『カソウスキの行方』(講談社)、『婚礼、葬礼、その他』(文藝春秋)、『アレグリアとは仕事はできない』(筑摩書房)がある。