群像2021年4月号

ルポ 古川日出男

故郷を歩き、全身全霊で思考せよ。国、国土、国民、国家……国が増殖する。小説家が世界を思考した渾身ルポ最終章。古川日出男「国家・ゼロエフ・浄土」。


創作 小林エリカ くどうれいん 関口涼子

来年はきっと、みんなで集まれるかな—-翻訳すること、書くことをめぐる文学の冒険。小林エリカの創作「最後の挨拶 His Last Bow」。十年の月日は「わたし」たちに何をもたらしたのか。気鋭の書き手による初小説。くどうれいんの創作「氷柱の声」。カタストロフのただなかで「理想の食卓」はあり得るのか。関口涼子のエッセイ「ベイルート961時間(及びそれに伴う321皿の料理)」。


新連載 戸谷洋志

技術が匿名化したとき、私たちは無意識のうちに暴力にさらされる。人間の思考を抑制する「悪」の姿を見極める、戸谷洋志「スマートな悪 技術と暴力について」。


論点 井上弘貴 上出遼平 品田知美 丸山俊一 丸山美佳

今月の論点は「ポリティカル・コレクトネス批判の論理と生理」(井上弘貴)、「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」(上出遼平)、「母親とはどういう存在なのか——返礼なきケアの贈り手たち」(品田知美)、「2021年 越境の旅——ノーランからキューブリックまで「教養番組」のつくり方」(丸山俊一)、「学び/捨て去ること(アンラーン)の可能性をめぐって」(丸山美佳)を掲載。


レポ漫画 増村十七

10周年を迎えるNHK Eテレの人気番組「100分de名著」の収録現場で、『バクちゃん』の漫画家が見つけた言葉たち。増村十七「100de名言を求めて」。


もくじ

〈ルポルタージュ〉

国家・ゼロエフ・浄土  古川日出男

〈創作〉

最後の挨拶 His Last Bow  小林エリカ

氷柱の声  くどうれいん

〈エッセイ〉

ベイルート961時間(及びそれに伴う321皿の料理)  関口涼子

〈批評〉

近代を彫刻/超克する〔2〕 小田原のどか

〈ノンフィクション完結〉 

2011―2021 視えない線の上で〔8〕 石戸諭

〈新連載〉 

スマートな悪 技術と暴力について  戸谷洋志

〈創作〉  

ヒカリ文集〔4〕  松浦理英子

ほんのこの場  町屋良平

〈批評〉 

空海〔2〕  安藤礼二

〈論点〉 

ポリティカル・コレクトネス批判の論理と生理  井上弘貴

僕たちテレビは自ら死んでいくのか  上出遼平

母親とはどういう存在なのか——返礼なきケアの贈り手たち  品田知美

2021年 越境の旅——ノーランからキューブリックまで「教養番組」のつくり方  丸山俊一

学び/捨て去ること(アンラーン)の可能性をめぐって  丸山美佳

〈レポ漫画〉

100分de名言を求めて  増村十七

〈article〉 

消すことによって書く——大江健三郎の「自筆原稿」が秘める価値  尾崎真理子

〈コラボ連載〉

DIG 現代新書クラシックス〔4〕  島田英明「鏡の前—菅野覚明『神道の逆襲』を読む—」

〈鼎談シリーズ〉

徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術〔7〕「映像」の運命  松浦寿輝×沼野充義×田中純

〈連載〉

見えない道標〔2〕  若松英輔

戒厳〔5〕  四方田犬彦

はぐれんぼう〔9〕  青山七恵

ゴッホの犬と耳とひまわり〔15〕  長野まゆみ

鉄の胡蝶は記憶に夢の歳月に彫るか〔32〕  保坂和志

二月のつぎに七月が〔35〕  堀江敏幸

こんな日もある 競馬徒然草〔2〕  古井由吉

旋回する人類学〔2〕  松村圭一郎

ポエトリー・ドッグス〔3〕  斉藤倫  

マルクスる思考〔7〕  斎藤幸平

硝子万華鏡〔7〕  日和聡子×ヒグチユウコ

現代短歌ノート二冊目〔7〕  穂村弘

日常の横顔〔8〕  松田青子

Nの廻廊〔8〕  保阪正康

薄れゆく境界線 現代アメリカ小説探訪〔11〕  諏訪部浩一

ハロー、ユーラシア〔11〕  福嶋亮大

歴史の屑拾い〔12〕  藤原辰史

「近過去」としての平成〔13〕  武田砂鉄

「ヤッター」の雰囲気〔13〕  星野概念

星占い的思考〔13〕  石井ゆかり

辺境図書館〔14〕  皆川博子

国家と批評〔13〕  大澤聡

新連載 文芸文庫の風景〔4〕  馬込将充

極私的雑誌デザイン考〔15〕  川名潤

文芸文庫通信〔2〕 

〈随筆〉

おむかえのあとさき 三品輝起

思い出の犬  水沢なお

子として、父として、木として  レ・ロマネスクTOBI

といのあわい  磯上竜也

〈書評〉

『マザリング』中村佑子  小川公代

『カンマの女王』メアリ・ノリス  牟田都子

〈創作合評〉

「水たまりで息をする」高瀬隼子

「骨を撫でる」三国美千子

「桃息吐息」いしいしんじ

野崎歓×小澤英実×水原涼