群像2023年3月号

【新連載】羽田圭介 小川公代 【芥川賞受賞記念】井戸川射子

 

マスコミの過剰な配慮、SNSでの誹謗中傷、敬語を使う暴力男。彼らはなぜ自分の「正しさ」を疑わないのか。抑制された筆致で現代の〝タブー〟に切りこむ渾身作。(羽田圭介「タブー・トラック」)

 

 

好奇心のおもむくまま、心が躍動するままなにかに夢中になることの素晴らしさ。野上弥生子と彼女の文学作品を手がかりに、これまでの、そしてこれからの「女たち」が辿る道を照らしだす。生の輝ける瞬間を言祝ぐ、新連載評論。(小川公代「翔ぶ女たち」)

 

 

『この世の喜びよ』で第168回芥川賞を受賞した著者の小特集。受賞第一作となる詩と短篇をお届けする。(井戸川射子「それは永遠でない、もっとすごい」)

 

出会わなかったはずのふたりが出会う、ひとり言のように出ていく声が交わる。四方八方の鳴き声、しんと静かな家、ヘッドホンに響くエレクトーンの音―ここに世界が立ち上がる。(井戸川射子「野鳥園」)


【創作】川上弘美 くどうれいん 畠山丑雄 【批評】小峰ひずみ 高原到

 

シルバーシートに並んで座ることを断られたので、わたしとカズは向かい合わせで電車に揺られている。今日はカズの、捨てにくいけれど捨てたいものを、一緒に捨てに行くのだ。(川上弘美「山羊は、いなかった」)

 

「いってくるね」「あ、春奈」「ん」「きょう、迎えに行こうか」「え、どうしたの」今夜がどうなってしまうのか、ぼくにはわからない。(くどうれいん「湯気」)

 

惟喬親王が隠棲していたとされる山あいの町に配属された私は、いつしか町の夢に取りこまれていく。(畠山丑雄「改元」)

 

 

お笑い芸人の闘いは、日本語内部でのポピュリズムとして描かれていた――。前衛的コミュニケーションの基盤にあるべき〈快楽〉について問う、自己批評的試論。群像新人評論賞受賞第一作。(小峰ひずみ「大阪(弁)の反逆 お笑いとポピュリズム)

 

戦後文化史のなかで日本人の復讐心はどのように描かれてきたのか。小説、漫画、アニメを軸に、彼ら/彼女らの軌跡を追う。(高原到「「半人間」たちの復讐 巨人たちは屍の街を進撃するか?)


【ノンフィクション】稲泉連 【対談】國分功一郎×宇野常寛 とあるアラ子×藤野可織

 

大天幕の中に入ると、そこは夢の世界だった―。丸盆の上で繰り広げられる煌びやかな舞台、旅を日常とする芸人たち。失われた「サーカスの世界」を甦らせる、私的ノンフィクション。(稲泉連「サーカスの子」)

 

 

 

いや応なく生じてしまう目的をどう解毒するか。解毒されたその先にあるものとは。(國分功一郎×宇野常寛「目的とゲームの「外部」へ」)

 

たいしたことないわけがない!「小さな攻撃」が生み出す傷。私たちが漫画や小説から掬いとったものとは、なんだったのか。『青木きららのちょっとした冒険』刊行記念対談。(とあるアラ子×藤野可織「ルッキズムが溶け込んだ「まあまあ最悪なこの世界」を考える」)


【追悼】【磯崎新】田中純 【吉田喜重】舩橋淳 【渡辺京二】池澤夏樹 田尻久子

 

磯崎新さん吉田喜重さん渡辺京二さんが逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。追悼文を4本お寄せいただきました。田中純さん「見えない建築へ」舩橋淳さん「吉田喜重、映像のエティカ」池澤夏樹さん「渡辺京二さんを見送る」田尻久子さん「旅の仲間」です。


【論点】岩川ありさ 河南瑠莉 【article】田口幹人 【コラボ連載】松田智裕

 

 

 

 

 

論点は2本。岩川ありささん「養生する言葉」河南瑠莉さん「空っぽの「正義」の彼方で、どのような「連帯」が可能なのか」

 

articleは、元書店員で今は未来読書研究所代表をつとめる田口幹人さん「これからの読者のために」をお書きいただきました。

 

現代新書編集部とのコラボ連載「SEEDS」、今月は松田智裕さん「読むことのリアリティ」です。


もくじ

 

 

〈新連載〉

 

〈創作〉

 

 

    • 「タブートラック」羽田圭介

 

 

〈評論〉

 

 

    • 「翔ぶ女たち」小川公代

 

 

〈芥川賞受賞記念・小特集井戸川射子〉

 

〈受賞詩〉

 

 

    • 「それは永遠でない、もっとすごい」井戸川射子

 

 

〈創作〉

 

 

    • 「野鳥園」井戸川射子

 

 

〈創作〉

 

 

    • 「山羊は、いなかった」川上弘美

 

    • 「湯気」くどうれいん

 

 

〈中篇一挙〉

 

 

    • 「改元」畠山丑雄

 

 

〈批評〉

 

 

    • 「大阪(弁)の反逆――お笑いとポピュリズム」小峰ひずみ

 

    • 「「半人間」たちの復讐――巨人たちは屍の街を進撃するか?」高原到

 

 

〈ノンフィクション〉

 

 

    • 「サーカスの子」稲泉連

 

 

〈対談〉

 

 

    • 「目的とゲームの「外部」へ」國分功一郎×宇野常寛

 

    • 「ルッキズムが溶け込んだ「まあまあ最悪なこの世界」を考える」とあるアラ子×藤野可織

 

 

〈追悼〉

 

〈追悼・磯崎新〉

 

 

    • 「見えない建築へ」田中純

 

 

〈追悼・吉田喜重〉

 

 

    • 「吉田喜重、映像のエティカ」舩橋淳

 

 

〈追悼・渡辺京二〉

 

 

 

    • 「渡辺京二さんを見送る」池澤夏樹

 

    • 「旅の仲間」田尻久子

 

 

〈論点〉

 

 

 

 

    • 「養生する言葉」岩川ありさ

 

    • 「空っぽの「正義」の彼方で、どのような「連帯」が可能なのか」河南瑠莉

 

 

〈article〉

 

 

    • 「これからの読者のために」田口幹人

 

 

〈コラボ連載〉

 

 

    • 「SEEDS 現代新書のタネ〔13〕」松田智裕

 

 

 

 

 

 

 

〈連載〉

 

 

    • 「多頭獣の話〔6〕」上田岳弘

 

    • 「の、すべて〔14〕」古川日出男

 

    • 「新「古事記」an impossible story〔15〕」村田喜代子

 

    • 「鉄の胡蝶は記憶は夢に歳月に彫るか〔55〕」保坂和志

 

    • 「二月のつぎに七月が〔46〕」堀江敏幸

 

    • 「レディ・ムラサキのティーパーティー――姉妹訳 ウェイリー源氏物語〔4〕」毬矢まりえ×森山恵

 

    • 「歩山録〔5〕」上出遼平

 

    • 「野良の暦〔5〕」鎌田裕樹

 

    • 「「くぐり抜け」の哲学〔6〕」稲垣諭

 

    • 「文化の脱走兵〔6〕」奈倉有里

 

    • 「事務に狂う人々〔10〕」阿部公彦

 

    • 「撮るあなたを撮るわたしを〔9〕」大山顕

 

    • 「世界の適切な保存〔11〕」永井玲衣

 

    • 「なめらかな人〔12〕」百瀬文

 

    • 「文学のエコロジー〔13〕」山本貴光

 

    • 「磯崎新論〔15〕」田中純

 

    • 「地図とその分身たち〔16〕」東辻賢治郎

 

    • 「言葉の展望台〔22〕」三木那由他

 

    • 「こんな日もある 競馬徒然草〔25〕」古井由吉

 

    • 「現代短歌ノート二冊目〔29〕」穂村弘

 

    • 「日日是目分量〔31〕」くどうれいん

 

    • 「「近過去」としての平成〔35〕」武田砂鉄

 

    • 「星占い的思考〔36〕」石井ゆかり

 

    • 「所有について〔21〕」鷲田清一

 

    • 「辺境図書館〔35〕」皆川博子

 

    • 「国家と批評〔27〕」大澤聡

 

    • 「〈世界史〉の哲学〔146〕」大澤真幸

 

    • 文芸文庫の風景〔27〕  浜野令子

 

 

 

 

 

〈随筆〉

 

 

 

    • 「延命医療をめぐる20年」会田薫子

 

    • 「ほの暗いエネルギー」大谷朝子

 

    • 「本屋開店100日日誌」大森皓太

 

    • 「こわれもの、われもの」川野芽生

 

    • 「土鍋の蓋が割れて」合田文

 

    • 「オンライン授業が変えたもの」小林亜津子

 

    • 「「言わない」と「噓をつく」の間」富永京子

 

    • 「トイレ詩集」日比野コレコ

 

    • 「雑談の面積を求めよ」藤岡みなみ

 

    • 「罅割れたこのほしで」堀静香

 

    • 「愛と衛生」山下紘加

 

 

〈書評〉

 

 

    • 『物語とトラウマ』岩川ありさ:小川公代

 

    • 『ゴッホの犬と耳とひまわり』長野まゆみ:清水良典