群像2023年4月号

【創作】金原ひとみ 【テックと倫理】円城塔 宮内悠介 工藤あゆみ 伊勢康平 江間有沙 戸谷洋志 枇谷玲子 

名だけ店長ならさっさと辞めてほしいわ。いくらでも出てくる店長への悪口で、フェスティヴィタ池尻大橋店の盛り上がりが思わぬ方向になだれこんでいく。(金原ひとみ「ウルトラノーマル」)


自己/他者。現在/未来。自由/管理――分断から融解へと向かう、テクノロジーの時代のエチカをさぐる。「テックと倫理」特集。

あらゆるものがあらゆるものを監視しており、監視されていないものは存在していないも同然だった。(円城塔「見張りたち」)

人々はデジタルドラッグに耽溺し、ルーシッドは時代と世代のアイコンになった。(宮内悠介「明晰夢」)

自分で考えて、自分に合うものを、自分が好きなときに選べるといいね。ユーモラスな絵と癒やしてくれることばたち。(工藤あゆみ「ニュースの時間」)

調理の技術をひとつの宇宙技芸と考え、テクノロジーの新たな可能性を導き出す。(伊勢康平「技術多様性の論理と中華料理の哲学」)

ロボットアームがパンケーキをデコレーションするとき、その裏側では何が起きているのか。身体の拡張として、あるいは人間の分身として、ロボットやAIと協働する可能性と課題に迫る。(江間有沙「アバター共創が提供する社会的価値」)

現実への疎外感がテクノロジーと結びついたとき、人間の欲望はどこに向かうのだろう。(戸谷洋志「メタバースとニヒリズム あるいはポストアトム時代の欲望について」)

私たちが子供だった頃にはなかったもの――PCやiPad、SNSを子どもが利用するとき、家庭のルールをどのように定めるか。答えのない問いに向き合う日々に、デンマークの心理学者からヒントを得る。(枇谷玲子「親子関係と「デジタルおしゃぶり」を考える」)


【震災後の世界12】久保田沙耶 瀬尾夏美 髙橋若菜 【本の名刺】石田夏穂 高山羽根子

震災の記憶/記録――「震災後の世界12」は、久保田沙耶さん「もぬけの城」瀬尾夏美さん「さみしさという媒介についての試論」髙橋若菜さん「奪われたくらしと共感共苦」

新連載「本の名刺」がスタートです。新刊の著書に文字通り本の「自己紹介」をしてもらう企画、今月は石田夏穂さん『ケチる貴方』高山羽根子さん『パレードのシステム』です。


【対談】松浦寿輝×星野太 【小特集】紗倉まな

変容するパラサイトのイメージ、血なまぐさい戦争のただ中の友情――われわれはいかに書くことを通して生を味わうのか。『香港陥落』『食客論』、W刊行記念対談。(松浦寿輝×星野太「書くことの味わいをめぐって」)

一方通行のいびつな恋愛を通じて、自分の中の矛盾と向き合う。曖昧で割り切れない関係性の魅力を描く、作家の新境地。『ごっこ』刊行記念小特集は、ロングインタビュー「名づけられない関係を描く」(インタビュアー:花田菜々子さん)紗倉まなさんによる特別エッセイ「その恋愛がことごとくうまくいかないのは」


【追悼・加賀乙彦】毬矢まりえ×森山恵 矢代朝子 【論点】ジェレミー・ウールズィー

加賀乙彦さんが逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。追悼文を2本お寄せいただきました。毬矢まりえさん×森山恵さん「偉大な魂と森で出逢う」矢代朝子さん「加賀先生」

論点はジェレミー・ウールズィーさん「「事実の時代」の考古学」です


【レビュー】三木那由他 【最終回】武田砂鉄 村田喜代子



三木那由他さんに『作りたい女と食べたい女』のレビュー「安全な食卓」をご寄稿いただきました。

連載が2本、最終回を迎えました。武田砂鉄さん「「近過去」としての平成」村田喜代子さん「新「古事記」an impossible story」。どちらも今年単行本化予定です。

コラボ連載「SEEDS」は、槇野沙央理さん「「私の他者」の生成――ウィトゲンシュタイン的アプローチ」です。


もくじ

〈創作〉

  • 「ウルトラノーマル」金原ひとみ

〈特集・テックと倫理〉

〈創作〉

  • 「見張りたち」円城塔
  • 「明晰夢」宮内悠介

〈短篇集〉

  • 「ニュースの時間」工藤あゆみ

〈批評〉

  • 「技術多様性の論理と中華料理の哲学」伊勢康平
  • 「アバター共創が提供する社会的価値」江間有沙
  • 「メタバースとニヒリズム あるいはポストアトム時代の欲望について」戸谷洋志
  • 「親子関係と「デジタルおしゃぶり」を考える」枇谷玲子

〈震災後の世界12〉

  • 「もぬけの城」久保田沙耶
  • 「さみしさという媒介についての試論」瀬尾夏美
  • 「奪われたくらしと共感共苦」髙橋若菜

〈対談〉

  • 「書くことの味わいをめぐって」松浦寿輝×星野太

〈小特集・紗倉まな〉

〈ロングインタビュー〉

  • 「名づけられない関係を描く」紗倉まな(インタビュアー:花田菜々子)

〈特別エッセイ〉

  • 「その恋愛がことごとくうまくいかないのは」紗倉まな

〈追悼・加賀乙彦〉

  • 「偉大な魂と森で出逢う」毬矢まりえ×森山恵
  • 「加賀先生」矢代朝子

〈論点〉

  • 「「事実の時代」の考古学」ジェレミー・ウールズィー

〈新連載・本の名刺〉

    〈レビュー〉

      • 「安全な場所 『作りたい女と食べたい女』」三木那由他

      〈最終回〉

      • 「「近過去」としての平成〔36〕」武田砂鉄
      • 「新「古事記」an impossible story〔16〕」村田喜代子

      〈コラボ連載〉

      • 「SEEDS 現代新書のタネ〔14〕」槇野沙央理

          〈連載〉

          • 「タブー・トラック〔2〕」羽田圭介
          • 「多頭獣の話〔7〕」上田岳弘
          • 「の、すべて〔15〕」古川日出男
          • 「鉄の胡蝶は歳月は記憶に夢に彫るか〔56〕」保坂和志
          • 「レディ・ムラサキのティーパーティー 姉妹訳 ウェイリー源氏物語〔5〕」毬矢まりえ×森山恵
          • 「歩山録〔6〕」上出遼平
          • 「野良の暦〔6〕」鎌田裕樹
          • 「「くぐり抜け」の哲学〔7〕」稲垣諭
          • 「文化の脱走兵〔7〕」奈倉有里
          • 「庭の話〔9〕」宇野常寛
          • 「事務に狂う人々〔11〕」阿部公彦
          • 「撮るあなたを撮るわたしを〔10〕」大山顕
          • 「世界の適切な保存〔12〕」永井玲衣
          • 「なめらかな人〔13〕」百瀬文
          • 「文学のエコロジー〔14〕」山本貴光
          • 「投壜通信〔8〕」伊藤潤一郎
          • 「磯崎新論〔16〕」田中純
          • 「地図とその分身たち〔17〕」東辻賢治郎
          • 「言葉の展望台〔23〕」三木那由他
          • 「世界と私のAtoZ〔16〕」竹田ダニエル
          • 「こんな日もある 競馬徒然草〔26〕」古井由吉
          • 「現代短歌ノート二冊目〔30〕」穂村弘
          • 「日日是目分量〔32〕」くどうれいん
          • 「星占い的思考〔37〕」石井ゆかり
          • 「国家と批評〔28〕」大澤聡
          • 「文芸文庫の風景〔28〕」浜野令子

            〈随筆〉

            • 「愛こそすべて、じゃなくない?」アサダアツシ
            • 「わたしと変なおじさん」小野絵里華
            • 「プラトーノフとともに、より入念なfuckを」工藤順
            • 「当事者の話を漫画で届けるということ」水谷緑
            • 「ひとりで撮る」南阿沙美
            • 「男性と化粧の五○年」山村博美

            〈書評〉

            • 『ケチる貴方』石田夏穂:三宅香帆
            • 『ケアする惑星』小川公代:渡辺祐真
            • 『パレードのシステム』高山羽根子:佐藤康智
            • 『食客論』星野太:関口涼子