群像2023年10月号

【新連載】小川洋子 【本誌初登場・一挙掲載】西尾維新

小川洋子さんの新連載がスタートします。
創作読み切りは、本誌初登場となる西尾維新さんの長篇一挙掲載です。「群像」でしか読めない、西尾さんによる令和の「猫」小説をお楽しみください。

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小川洋子さん「骨壺のカルテット
院長先生は父の骨壺から四つの骨片を取り出すと、飴の空き缶の中に入れた。「これがお父さまのお声です」―。
VRアニメーション『耳に棲むもの』から生まれた、もうひとつの物語。
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西尾維新さん「鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説」
鬼怒楯岩大吊橋ツキヌが、面構えのない猫のペットシッターを勤めることになったのには複雑な事情がある―。
本誌初登場。昨年作家デビュー二〇周年を迎えた西尾維新が届ける令和の「猫」小説。
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【創作】石沢麻依 井戸川射子 小野正嗣 高瀬隼子 【New Manual】舞城王太郎

読み切り創作は、石沢麻依さん「琥珀の家の掌」、井戸川射子さん「風雨」、小野正嗣さん「宇宙塵」、高瀬隼子「花束の夜」と、大充実のラインナップ。
文×論×服「New Manual」第4回は、偶然ではありますが、西尾維新さんと同じく小説誌「メフィスト」からデビューした舞城王太郎さんが登場。異例の一挙108枚となる「デニムハンター」をご寄稿いただきました。

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石沢麻依さん「琥珀の家の掌」
従姉妹から届いた個展の案内状には、琥珀に包まれた叔母の掌が蹲っていた。忘れていたひと夏の記憶が鮮やかによみがえる。
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井戸川射子さん「風雨」
雨が降っていた。風が音を増した。予報では逃げ切れるはずだった。バスはまだ動かない。
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小野正嗣さん「宇宙塵」
父から娘への思いは、誰知らず降り積もる。宇宙からの塵がそうであるように。
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高瀬隼子さん「花束の夜」
花束は見た目よりも重たい。水本にとってはこれが初めて手に持つ「退職の花束」だった。
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舞城王太郎さん「デニムハンター 」
「人が穴に入るんじゃない。穴が人を吸い込むんだ」。保安官のブリットは、廃坑で消えたデニムハンターを追う。
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【新連載】高山羽根子 丸山俊一 【インタビュー】川上弘美×鴻巣友季子

創作以外の新連載として、高山羽根子さん「いま、球場にいます」と、丸山俊一さん「ハザマの思考」のふたつが始まります。
本誌に掲載、このたび単行本化された『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』の刊行を記念し、鴻巣友季子さんが聞き手となった川上弘美さんのインタビューを掲載。鴻巣さんが川上文学の魅力に迫ります。
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高山羽根子さん「いま、球場にいます」
WBC、NPBから韓国野球……大の野球ファンである著者が不定期に伝えていく、野球場からの報告。
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丸山俊一さん「ハザマの思考」
「メイン」と「サブ」の「ハザマ」に分け入った先に見えてくるもの。
教養番組のテレビプロデューサーが思考するサブカルチャー精神とは。
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川上弘美さん×鴻巣友季子さん「物語るために遠ざかること。時間、記憶、ディスタンス。 」
単純な因果関係ではできていない世界を、小説全体であらわすために。近接を重ねて遠接を描く、川上文学の魅力に迫る。
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【批評】安藤礼二 エレナ・ヤヌリス(多和田葉子訳) 【連作】柴崎友香

安藤礼二さんの批評「空海」は12回を迎えています。
エレナ・ヤヌリスさんによる小川洋子論を、多和田葉子さん訳でお届けします。
柴崎友香さんの好評連作「帰れない探偵」は「嵐の中、嵐のあと」。
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安藤礼二さん「空海」
空海は王権の在り方を根底から変えてしまった。新たな王は、現実の政治的な王ではなく超現実の宗教的な王とならなければならない。
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エレナ・ヤヌリスさん(多和田葉子訳)「小川洋子の作品におけるエモーションの記号化とその情動と感情作用の可能性」
小川洋子の小説は、なぜ世界の読者の感情に訴えかけるのか。感情科学と文学研究の両面から小説の謎にアプローチする論考。
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柴崎友香さん「帰れない探偵 嵐の中、嵐のあと」
四十年前のある事件。資料のなかに「祖母に似た女性の写真」を見つける…
ひとは過去とどんな関係をもつことができるのか。好評連作最新作。
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【本の名刺】長島有里枝 【最終回】稲垣諭

「本の名刺」は、長島有里枝さん『去年の今日』。
くらげという他者から始まった稲垣諭さん「「くぐり抜け」の哲学」が最終回を迎えています。弊社より単行本化予定です。
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長島有里枝さん「本の名刺」
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稲垣諭さん「くぐり抜け」の哲学」
くらげという他者から始まり、「弱さ」や「取り残されていく人々」をくぐり抜けて、たどり着いた先にあるもの。
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もくじ

文×論。

 

〈新連載・連作〉

  • 「骨壺のカルテット」小川洋子

 

〈本誌初登場・一挙掲載〉

  • 「鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説」西尾維新

 

〈創作〉

  • 「琥珀の家の掌」石沢麻依
  • 「風雨」井戸川射子
  • 「宇宙塵」小野正嗣
  • 「花束の夜」高瀬準子

 

〈新連載〉

  • 「いま、球場にいます」高山羽根子
  • 「ハザマの思考」丸山俊一

 

〈インタビュー〉

  • 「物語るために遠ざかること。時間、記憶、ディスタンス。」川上弘美 聞き手 鴻巣友季子

 

〈批評〉

  • 「空海」安藤礼二
  • 「小川洋子の作品におけるエモーションの記号化とその情動と感情作用の可能性」エレナ・ヤヌリス 多和田葉子 訳

 

〈連作〉

  • 「帰れない探偵 嵐の中、嵐のあと」柴崎友香

 

〈New Manual〉

  • 「デニムハンター」舞城王太郎

 

〈本の名刺〉

 

〈最終回〉

  • 「くぐり抜けの哲学」稲垣諭

 

〈連載〉

    • 「口訳 太平記 ラブ&ピース 外道ジョンレノンを根絶せよ〔2〕」 町田康
    • 「無形〔4〕」井戸川射子
    • 「タブー・トラック〔8〕」羽田圭介
    • 「多頭獣の話〔13〕」上田岳弘
    • 「鉄の胡蝶は記憶は歳月は夢は彫るか〔62〕」保坂和志
    • 「二月のつぎに七月が〔51〕」堀江敏幸
    • 「セキュリティの共和国——戦略文化とアメリカ文学〔2〕」新田啓子
    • 「星になっても〔2〕」岩内章太郎
    • 「ゲは言語学のゲ〔3〕吉岡乾
    • 「養生する言葉〔4〕」岩川ありさ
    • 「僕と「先生」〔2〕」長瀬海
    • 「メタバース現象考 ここではないどこかへ〔4〕」戸谷洋志
    • 「言葉と物〔4〕」福尾匠
    • 「群像短歌部〔4〕」木下龍也
    • 「チャンドラー講義〔5〕」諏訪部浩一
    • 「星沙たち、〔5〕」青葉市子
    • 「レディ・ムラサキのティーパーティー 姉妹訳 ウェイリー源氏物語〔11〕」毬矢まりえ×森山恵
    • 「野良の暦〔12〕」鎌田裕樹
    • 「文化の脱走兵〔12〕」奈倉有里
    • 「庭の話〔15〕」宇野常寛
    • 「世界の適切な保存〔18〕」永井玲衣
    • 「なめらかな人〔19〕」百瀬文
    • 「磯崎新論〔22〕」田中純
    • 「地図とその分身たち〔23〕」東辻賢治郎
    • 「言葉の展望台〔28〕」三木那由他
    • 「世界と私のA to Z〔20〕 」竹田ダニエル
    • 「こんな日もある 競馬徒然草〔32〕」古井由吉
    • 「現代短歌ノート二冊目〔36〕」穂村弘
    • 「日日是目分量〔38〕」くどうれいん
    • 「星占い的思考〔43〕」石井ゆかり
    • 「所有について〔26〕」鷲田清一
    • 「文芸文庫 の風景〔34〕」川勝徳重
    • 「文一の本棚〔4〕」松永K三蔵

 

〈随筆〉

    • 「「故郷」から遠く離れて」王寺賢太
    • 「ChatGPT狂想曲」全卓樹
    • 「時折タイムスリップ」たなかみさき
    • 「宙に浮いた魂の受け皿」筒井淳也
    • 「自然と身体ひとつで」永沢碧衣
    • 「高速道路のバス停で」宮地尚子
    • 「苦痛神話」村中直人
    • 「たかが毛、されど毛」屋敷葉