群像2013年7月号

注目作家の中篇200枚

丹下健太「猫の目犬の鼻」

中学3年の夏休み前、根本心美は突然、別のクラスの小山一樹から「俺とつき合ってほしいんやけど」と告白された。YESかNOか、心美がどう返事しようか悩んでいる頃、生後半年に満たない猫の姉弟が近所を歩いていた。姉猫は後に心美から「ぶち子」と名付けられることになる。初恋、遠距離恋愛、初体験、就職活動、同窓会…心美は思春期から社会人へと成長し、ぶち子は出産と子離れを何度も繰り返す。丹下健太「猫の目犬の鼻」は、人と猫それぞれの十年間を鮮やかに描いた快作です!


新境地の中篇150枚

松波太郎「LIFE」

毎日だらだら且ぶらぶらしている猫木豊は、“だらだら且ぶらぶら”王国の国王として、国民に向けて壮大なスピーチをする自分を妄想する毎日を送っていたが、同棲中の彼女から「できたみたいなの、あかちゃん」と打ち明けられる。ついに猫木に二代目国王が誕生することに! 助産院での「ベビベビ体操」、さんざんなアルバイト、お腹のこどものふえない体重、そして帝王切開による出産……。松波太郎の新境地を開く意欲作「LIFE」が登場です!


群像新人賞受賞第一作

淺川継太「ある日の結婚」

淺川継太「ある日の結婚」は、愛し合うことの究極の形を描いた衝撃作! 三ヵ月前から毎朝、「ぼく」は必ず駅構内の同じ場所で「彼女」とすれ違うようになった。会議の準備で早く出た朝も、電車が止まって遅れた朝も、必ずぼくらはすれ違うのだ。毎朝の邂逅が本物なのか確かめるため、「ぼく」は休みの日曜日に出勤してみたが、やはり「彼女」と駅で出会う。“奇跡”によって急速に惹かれあう二人は、すぐに互いの体に対して抱く「奇妙な欲望」に気づき……。


第7回大江賞記念対談

大江健三郎×本谷有希子

第7回大江健三郎賞を記念して行われた、大江健三郎と受賞者・本谷有希子の公開対談を掲載。小説のエンターテインメント性とは何か? 即興性は長篇小説にも有効なのか? 小説家は「本当の事」を書けるのか? 受賞作『嵐のピクニック』を手がかりに、小説における即興、反復、破綻を語り尽くした充実の対話は必読です。


単行本刊行記念インタビュー

津島佑子/青山七恵

米兵と日本人女性との間に生まれた子どもたちを軸に戦後から現代までを描いた長篇『ヤマネコ・ドーム』。日本が隠してきたものをめぐり、苅部直津島佑子にインタビュー。

青山七恵が20代最後にひらいた新境地、『快楽』。夏のヴェニスを舞台に、二組の夫婦の欲望と退廃を描いた本作を、フランス文学者・野崎歓と語り合います。


もくじ

〈創作〉

猫の目犬の鼻  丹下健太

LIFE  松波太郎

〈群像新人文学賞受賞第一作〉

ある日の結婚  淺川継太

〈第7回大江健三郎賞記念対談〉

即興と反復と破綻――小説の面白さ  大江健三郎×本谷有希子

〈インタビュー〉

『ヤマネコ・ドーム』――隠された「戦後」をたどり直す  津島佑子 聞き手・苅部 直

欲望の不平等を大胆に描く 『快楽』の挑戦  青山七恵 聞き手・野崎 歓

〈特別寄稿〉

世界文学に抗して――一滞在者が見たボストン爆破事件  秋草俊一郎

〈連作批評〉〔2〕

『新しい小説のために』のために  佐々木 敦

〈連載小説〉

存在しない小説〔4〕  いとうせいこう

パノララ〔5〕  柴崎友香

寂しい丘で狩りをする〔7〕  辻原 登

晩年様式集〔16〕  大江健三郎

地上生活者 第五部 邂逅と思索〔17〕  李 恢成

夜は終わらない〔21〕  星野智幸

〈連載評論〉

皇后考〔10〕  原 武史

〈世界史〉の哲学〔52〕  大澤真幸

〈連載〉

創作の極意と掟〔7〕  筒井康隆

現代短歌ノート〔40〕  穂村 弘

映画時評〔55〕  蓮實重彦

〈随筆〉

生きられない孤独について  芹沢俊介

奈落が見える  中島義道

放心から倦怠へ  山城知佳子

パブリックアクセス そして8bit革命  堀 潤

〈私のベスト3〉

ブログやってるんですよ  福永 信

地図を育てる  さとうりさ

歯医者の本音  一青 妙

〈書評〉

3.11以降の「黙示」文学(『ヤマネコ・ドーム』津島佑子)  富岡幸一郎

現代のリアルに接続する“不穏さ”(『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹)  春日武彦

遊女たちのストライキ(『ゆうじょこう』村田喜代子)  山崎まどか

美とエロスの関係(『快楽』青山七恵)  津島佑子

〈創作合評〉

島田雅彦+大澤信亮+谷崎由依

「鶏が鳴く」波多野 陸(群像2013年6月号)

「酔いざめの三軒茶屋」片岡義男(群像2013年6月号)

「沈むフランシス」松家仁之(新潮2013年6月号)