群像2012年7月号

短篇「大盗庶幾」筒井康隆

新連載「三姉妹」福永 信

筒井康隆の短篇「大盗庶幾」が登場! 華やかなりし時代、美しい母と放蕩する父の元に育った美少年の数奇な運命とは――。

『一一一一一』が第25回三島由紀夫賞の候補になるなど、いま最注目の福永 信、待望の連載「三姉妹」がスタート。多機能携帯に代わり貝がらを耳に当てよと訴える長男。壮大な兄弟劇の幕が開く。


中篇150枚 墨谷 渉

短篇 藤野可織、木下古栗

墨谷 渉の中篇「もし、世界がうすいピンクいろだったら」を掲載。勤めていた会社が破たんした。でも倒産はしていない。宙ぶらりんで直面する「働く」こと、「生きる」ことについて。

藤野可織「おはなしして子ちゃん」は怖くて切ない珠玉の短篇。理科準備室でホルマリン漬けにされた猿の標本。本気で怖がる小川さんを、私たちは猿と一緒に閉じ込めた……。木下古栗の最新作「人は皆一人で生まれ一人で死んでいく」も必読です。


第6回大江賞記念対談

大江健三郎×綿矢りさ

大江健三郎と第6回大江賞受賞者の綿矢りさが、受賞作『かわいそうだね?』のキーワードである「慈愛」と、『個人的な体験』で使われている「忍耐」という言葉を手がかりに語り合います。作家にとっての創作活動と社会活動の両立は可能なのか? 本質的なモラルの表現方法とは?


新刊を巡る対談

多和田葉子×堀江敏幸

『雲をつかむ話』『燃焼のための習作』を巡る、多和田葉子堀江敏幸の豪華対談をお届けいたします。奇しくも「犯人」と「探偵」の存在が、重要な役割を果たしている2つの作品。「液体」という新たな共通点を手がかりに、雲のようにつながっていく対話をぜひご堪能下さい。


特集 5篇のデビュー小説

久保田智子、柴 幸男、光森裕樹、横田 徹、折口子尚

各界の第一線で活躍する5名が、初めて“小説”という表現に挑んだ処女競作! アナウンサーの久保田智子による「息切れ」、劇作家の柴 幸男による「朝がある」、歌人の光森裕樹による「フェルミ推定の夕暮れ」、戦場カメラマンの横田 徹による「狙撃兵」、折口子尚(哲学者・西川アサキと歌人・片岡聡一の共作筆名)による「永劫回帰の部屋」。新しい才能たちの登場を確かめてみて下さい。


もくじ

〈短篇〉

大盗庶幾  筒井康隆

〈短期新連載 1/4回〉

三姉妹  福永 信

〈創作〉

もし、世界がうすいピンクいろだったら  墨谷 渉

おはなしして子ちゃん  藤野可織

人は皆一人で生まれ一人で死んでいく  木下古栗

〈第6回大江健三郎賞記念対談〉

本質的なモラルを伝える一つの言葉  大江健三郎×綿矢りさ

〈対談〉

「犯人」と「探偵」が繋ぐ創作の水路  多和田葉子×堀江敏幸

〈特集 5篇のデビュー小説〉

息切れ  久保田智子

朝がある  柴 幸男

フェルミ推定の夕暮れ  光森裕樹

狙撃兵  横田 徹

永劫回帰の部屋  折口子尚

〈連作短篇〉〔3〕

●(クロボシ)  長野まゆみ

〈連作小説〉

ホサナ〔3〕  町田 康

〈評論〉

正体不明の「怪物」のためのデクパージュ――蓮實重彦『映画時評2009-2011』論  阿部和重

〈連載小説〉

地上生活者 第五部 邂逅と思索〔5〕  李恢成

晩年様式集(イン・レイト・スタイル)〔6〕  大江健三郎

夜は終わらない〔11〕  星野智幸

燃える家〔21〕  田中慎弥

未明の闘争〔33〕  保坂和志

〈連載評論〉

フランス文学と愛〔6〕  野崎 歓

〈世界史〉の哲学〔40〕   大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔28〕  穂村 弘

「生」の日ばかり〔40〕  秋山 駿

映画時評〔43〕  蓮實重彦

〈随筆〉

ニーチェとジャガイモ  山田太一

バラは暗闇でも赤いか?  野矢茂樹

移動のスタンダード  内藤千珠子

Your Favorite Things.  一條裕子

〈私のベスト3〉

(アマルコルド)×(ツィカ)×(マンディ)  スズキコージ

あこがれのばあさん  石田 千

忘れえぬ味 食べたことないけど!  川田宇一郎

〈書評〉

雑談の精神分析的パッチワーク(『燃焼のための習作』堀江敏幸)  山城むつみ

小説とは何かを問う行為(『カフカ式練習帳』保坂和志)  江南亜美子

A?と驚く夫婦の姿(『K』三木 卓)  平田俊子

コミカライズの誘惑(『長嶋有漫画化計画』長嶋 有)  斎藤 環

〈創作合評〉

関川夏央+大竹昭子+羽田圭介

「夜蜘蛛」田中慎弥(文學界2012年6月号)

「にゃあじゃわかんない」藤野可織(すばる2012年6月号)