群像2014年2月号

岸本佐知子 編

アンソロジー「変愛小説集」

ふつうの恋愛の美的基準から大きくはみ出した、変てこな愛の物語――「変愛(ヘンアイ)小説」。『変愛小説集』『変愛小説集Ⅱ』の編者でもある翻訳家・岸本佐知子が考える、日本の「変愛小説」の名手12人が豪華共演! グロテスクで、極端で、けれどとても純粋な愛の物語をお楽しみください。

川上弘美「形見」、多和田葉子「韋駄天どこまでも」、本谷有希子「藁の夫」、村田沙耶香「トリプル」、吉田知子「ほくろ毛」、深堀 骨「逆毛のトメ」、木下古栗「天使たちの野合」、安藤モモ子「カウンターイルミネーション」、吉田篤弘「梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる」、小池昌代「男鹿」、星野智幸「クエルボ」、津島佑子「ニューヨーク、ニューヨーク」


『舞台』刊行記念対談

西 加奈子×古市憲寿

「生きてるだけで恥ずかしい」――。自意識過剰な青年・葉太の初めてのニューヨーク一人旅を、ユーモラスにそして切実に描いた西加奈子の感動長篇『舞台』。刊行を記念し、『誰も戦争を教えてくれなかった』などで知られる気鋭の社会学者・古市憲寿と対談を行いました。

「恥ずかしいという苦しさ」を描きたかったという西加奈子。「自意識」や「本当の自分」という観念を、作品を通して語り合います。


連作評論 完結

安藤礼二「折口信夫の宇宙」

安藤礼二による折口信夫論がついに完結。森羅万象の「発生」をつかさどる神として「たましひ」が存在していたという折口。彼が到達した、本居宣長とも平田篤胤とも異なる「宇宙」の概念とは、果たして――!?


好評の連載第二回!

奥泉 光、片山杜秀

近未来を舞台にした奥泉光の新連載「ビビビ・ビ・バップ」。第二回では、ジャズピアニスト兼音響設計士のフォギーが、ケープタウンにある超巨大企業モリキテックの本社に到着。そこで待ち受けていたのは、和服を着た二人の男のアンドロイドで……。

両親を熱病で亡くした赤毛の少女アンの成長を描いた名作「赤毛のアン」。1979年にテレビ・アニメとして放映された際、オープニングとエンディングの歌を作曲したのは、天才・三善晃だった。その音楽の暴力的な凄まじさときたら――!? 片山杜秀の音楽評論「鬼子の歌」、作曲家・三善晃の「超弩級」の音楽に迫ります。


もくじ

〈特集 岸本佐知子編「変愛小説集」〉

形見  川上弘美

韋駄天どこまでも  多和田葉子

藁の夫  本谷有希子

トリプル  村田沙耶香

ほくろ毛  吉田知子

逆毛のトメ  深堀 骨

天使たちの野合  木下古栗

カウンターイルミネーション  安藤モモ子

梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる  吉田篤弘

男鹿  小池昌代

クエルボ  星野智幸

ニューヨーク、ニューヨーク  津島佑子

〈対談〉

終わりなき「自意識」との闘い  西 加奈子×古市憲寿

〈連作評論 完結〉

安藤礼二  折口信夫の宇宙

〈連載小説〉

ビビビ・ビ・バップ〔2〕  奥泉 光

時穴みみか〔5〕  藤野千夜

死に支度〔7〕  瀬戸内寂聴

パノララ〔11〕  柴崎友香

地上生活者 第五部 邂逅と思索〔24〕  李 恢成

〈連載評論〉

鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔2〕  片山杜秀

皇后考〔17〕  原 武史

〈世界史〉の哲学〔58〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔47〕  穂村 弘

映画時評〔62〕  蓮實重彦

〈随筆〉

物言い  竹西寛子

漂流通訳  青山七恵

見捨てられた場所から見えた景色は  山田 航

この社会の「体力」  白井 聡

〈私のベスト3〉

未だに夢か現実かわからない光景  鴻巣友季子

進化にかんする誤解  更科 功

身近においてながめたい虫  増井 元

〈書評〉

舞台を降りたとき人は(『舞台』西 加奈子)  瀧井朝世

アイロニーのなかの英雄(『Deluxe Edition』阿部和重)  池田雄一

ウロボロスとしての「私」(『私のなかの彼女』角田光代)  富岡幸一郎

〈創作合評〉

稲葉真弓+苅部 直+藤野可織

「ボラード病」吉村萬壱(文學界2014年1月号)

「どろにやいと」戌井昭人(群像2014年1月号)

「夏、そして冬」三木 卓(群像2014年1月号)