群像2014年7月号

新連載 連作短篇

島田雅彦「虚人の星」

小学三年生の私を寿司屋に置き去りにして、父は失踪した。残された若く美しい母のもとには、父の友人を名乗る三人の男が入れ代わり立ち代わりやってくる。体育会系の諸星達也、インテリの市川龍太郎、精神科医の宗猛。宗は私に、父はスパイだったと告げるが……。島田雅彦『虚人の星』、孤独な少年をめぐる実験的連作短篇です。


新連載

伊井直行「尻尾と心臓」

九州中部に本拠を置く柿谷忠実堂。その営業マンたちを外からフォローする女と、ワンマン社長率いる子会社に単身赴任することになった男。二人の“会社員”が直面するのは――。『会社員とは何者か?――会社員小説をめぐって』で独自の会社員論を展開した伊井直行による会社員小説、「尻尾と心臓」連載開始です。


一挙掲載220枚

山下澄人「ルンタ」

ルンタ、それはチベット語で「風の馬」という意味だ――。一緒に暮らしていた女を探し「山」へ向かったわたしは、途中でひどい吹雪に遭い遭難しかける。救ってくれた男たちからルンタという名の馬を譲り受け、さらに歩を進めるが……。山下澄人「ルンタ」、必読です。


第8回大江賞記念対談

大江健三郎×岩城けい

第8回大江健三郎賞受賞を記念して行われた、大江健三郎と受賞者・岩城けいの対談「この小説の新しさと独特さ」を掲載。大江健三郎が語る「時代の精神」とはどんなものなのか。小説を何度も書き直すことの意義とは。そして岩城けいが投げかけた、純文学の定義とは何かという問いへの答えは――?


『夜は終わらない』刊行記念対談 星野智幸×江國香織

「私が夢中になれるお話をしてよ。そうでなければ、あんたはお払い箱」。現代日本を舞台にした「アラビアンナイト」とも言うべき、星野智幸の新刊『夜は終わらない』。その刊行を記念し、江國香織との対談が行われました。読者を簡単には寄り添わせない強靭さ、読んでいて自我が危うくなる果てしなさ――、めくるめく物語の魅力を語りつくします。


もくじ

〈新連載 連作短篇〉

虚人の星  島田雅彦

〈新連載〉

尻尾と心臓  伊井直行

〈一挙掲載220枚〉

ルンタ  山下澄人

〈第8回大江健三郎賞受賞記念対談〉

この小説の新しさと独特さ  大江健三郎×岩城けい

〈対談〉

『夜は終わらない』――果てしない物語の世界へ  星野智幸×江國香織

〈連作〉〔4〕

春の坂道  古井由吉

〈評論〉

山人論――折口信夫と台湾  安藤礼二

〈連作批評〉

「小説」の上演(下)  佐々木 敦

〈連載小説〉

死に支度 最終回  瀬戸内寂聴

パノララ〔16〕  柴崎友香

ビビビ・ビ・バップ〔7〕  奥泉 光

時穴みみか〔10〕  藤野千夜

〈連載評論〉

チェ-ホフとロシアの世紀末〔3〕  沼野充義

鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔7〕  片山杜秀

皇后考〔22〕  原 武史

〈世界史〉の哲学〔63〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔52〕  穂村 弘

映画時評〔67〕  蓮實重彦

〈随筆〉

二人の女方          高橋睦郎

試験地獄・無間地獄      上野 誠

いま、相手に向かうことの尊さ 阿部仲麻呂

〈私のベスト3〉

南大西洋の両岸にて       旦 敬介

料理が良くて予約が取りやすい店 友里征耶

一人カラオケ、最高       春日太一

〈書評〉

自己の増殖と融合(『夜は終わらない』星野智幸)佐々木 敦

言葉によって作られたボディ(『ミッキーは谷中で六時三十分』片岡義男)小池昌代

グローバリズムの病(『女のいない男たち』村上春樹)前田英樹

「わたし」たち(『星よりひそかに』古谷利裕)柴崎友香

〈創作合評〉

堀江敏幸+諏訪哲史+平野啓一郎

「雨女」町田 康(新潮2014年6月号)

「春の庭」柴崎友香(文學界2014年6月号)

「吾輩ハ猫ニナル」横山悠太(群像2014年6月号)