群像2022年6月号

第65回群像新人文学賞発表【当選作】小砂川チト 平沢 逸

第65回群像新人文学賞は、2072篇の応募の中から小砂川チトさん「家庭用安心坑夫」平沢逸さん「点滅するものの革命」の2作が当選作に選ばれました。お二人のデビュー作を、受賞の言葉、選評(柴崎友香・島田雅彦・古川日出男・町田康・松浦理英子)と合わせてぜひお読み下さい。


【創作】鴻上尚史 島口大樹 長島有里枝 【新連載】阿部公彦

自分の部屋から眺めた屋上、受験勉強の合間の台所、仲間と集まった応接室――。父親が建てた緑の家がなくなる。僕はこの家の、僕たち家族の物語を書かなければならない。(鴻上尚史「愛媛県新居浜市上原一丁目三番地」)

「ねえ、覚えてる?」忘れていたことを思い出したときの、思い出そうとするときの、あの感覚。記憶をめぐる、愛をめぐる冒険。(島口大樹「遠い指先が触れて」)

PBがいなくなってから、母の涙を見ない日は一日もない。樹木は母の悲しみに寄り添う方法を考えている。(長島有里枝「フィービーちゃんと僕」)

これほど奇妙で、これほど私たちの生活と深くかかわるものがあるだろうか。「事務」の真相/深層に迫る連載がスタート。(阿部公彦「事務に狂う人々」)


【対談】中島京子×川和田恵真 宇田智子×橋本倫史

日本における難民受け入れ問題を扱った映画「マイスモールランド」を監督し、同タイトルの小説『マイスモールランド』を刊行した川和田恵真さんと、『やさしい猫』で吉川英治文学賞を受賞した中島京子さん。社会の不条理を「家族の物語」として紡ぐふたりの対話「見えない現実をフィクションで描く」

『水納島再訪』を発表した橋本倫史さんと、「市場の古本屋ウララ」の宇田智子さんによる、風景や時間についての語らい「『水納島再訪』をめぐって」。2本の対談をお楽しみ下さい。


【批評】野崎 歓 【エッセイ】奈倉有里 【論点】奥野 斐

野崎歓さんに、工藤庸子さん『大江健三郎と「晩年の仕事(レイト・ワーク)」』についての批評文をご寄稿いただきました。時代と社会の変動のなかで、今また新しい相貌を見せる大江文学とそのリーディングに迫ります。

『夕暮れに夜明けの歌を』が話題の奈倉有里さんに、エッセイ「クルミ世界の住人」をお書きいただきました。

今月の論点は、東京新聞の記者・奥野斐さんに、「家族観」の現在について論じていただいています。


【追悼】青山真治 【最終回】長野まゆみ

青山真治さんが逝去されました。阿部和重さんに追悼文をいただいております。謹んでお悔やみを申し上げます。

長野まゆみさん「ゴッホの犬と耳とひまわり」が最終回を迎えました。


もくじ

〈第65回群像新人文学賞発表〉

〈当選作〉

  • 家庭用安心坑夫  小砂川チト
  • 点滅するものの革命  平沢 逸
  • 受賞の言葉
  • 選評(柴崎友香/島田雅彦/古川日出男/町田 康/松浦理英子)

〈創作〉

  • 愛媛県新居浜市上原一丁目三番地  鴻上尚史
  • 遠い指先が触れて  島口大樹
  • フィービーちゃんと僕  長島有里枝

〈新連載〉

  • 事務に狂う人々  阿部公彦

〈対談〉

  • 見えない現実をフィクションで描く  中島京子×川和田恵真
  • 『水納島再訪』をめぐって  宇田智子×橋本倫史

〈批評〉

  • 「女たち」による小説の再生――工藤庸子『大江健三郎と「晩年の仕事(レイト・ワーク)」』  野崎 歓

〈エッセイ〉

  • クルミ世界の住人  奈倉有里

    〈追悼・青山真治〉

    • See The Sky About To Rain――青山真治追悼  阿部和重

    〈論点〉

    • 「家族観」を塗り替えていくために  奥野 斐

    〈最終回〉

    • ゴッホの犬と耳とひまわり〔28〕  長野まゆみ

      〈コラボ連載〉

      • SEEDS 現代新書のタネ〔5〕この上なく非ドゥルーズ的な世紀においてドゥルーズを読むこと――万人のための、そして誰のためでもない哲学という猛毒について――  鹿野祐嗣

      〈連載〉

      • 太陽諸島〔9〕  多和田葉子
      • 新「古事記」an impossible story〔9〕  村田喜代子
      • 見えない道標〔12〕  若松英輔
      • 鉄の胡蝶は記憶の夢に歳月に彫るか〔46〕  保坂和志
      • 二月のつぎに七月が〔41〕  堀江敏幸
      • 撮るあなたを撮るわたしを〔2〕  大山 顕
      • 世界の適切な保存〔2〕  永井玲衣
      • なめらかな人〔3〕  百瀬 文
      • 文学のエコロジー〔4〕  山本貴光
      • 投壜通信〔3〕  伊藤潤一郎
      • 磯崎新論〔6〕  田中 純
      • 講談放浪記〔6〕  神田伯山
      • 地図とその分身たち〔8〕  東辻賢治郎
      • ケアする惑星〔11〕  小川公代
      • 言葉の展望台〔14〕  三木那由他
      • こんな日もある 競馬徒然草〔16〕  古井由吉
      • 旋回する人類学〔16〕  松村圭一郎
      • 現代短歌ノート二冊目〔21〕  穂村 弘
      • 日日是目分量〔22〕  くどうれいん
      • Nの廻廊〔13〕  保阪正康
      • 薄れゆく境界線 現代アメリカ小説探訪〔24〕  諏訪部浩一  
      • 「近過去」としての平成〔27〕  武田砂鉄
      • 星占い的思考〔27〕  石井ゆかり
      • 所有について〔14〕  鷲田清一
      • 辺境図書館〔27〕  皆川博子
      • 国家と批評〔24〕  大澤 聡
      • 文芸文庫の風景〔18〕  水戸部 功
      • 極私的雑誌デザイン考〔27〕  川名 潤

        〈随筆〉

        • 腐る宝石  久保田沙耶
        • おばあちゃんだらけの国で  錦見映理子

        〈書評〉