群像2015年7月号

特集「対話」 小野正嗣×稲垣吾郎「本を読もう。話をしよう。」

「九年前の祈り」芥川賞受賞を受けテレビ番組で共演した小野正嗣稲垣吾郎。それをきっかけにした、二人の異色対談「本を読もう。話をしよう。」を掲載。「早く結果だけ知りたい、のではなく、過程にこそ素晴らしいものがつまっている」――。稲垣吾郎の言葉から、映画、文学、芝居、さまざまな芸術作品を語り合います。


対談 古井由吉×堀江敏幸

鼎談 穂村 弘×小澤 實×小池昌代

徒然というのは独白ではない――。西洋渡りの近代小説とは異なる自我をほぐしていくような書き方の八つの短篇からなる古井由吉の新刊『雨の裾』。作品をめぐって堀江敏幸と対談しました。「連れ連れに文学を思う」、本とともにお楽しみください。

穂村弘『ぼくの短歌ノート』(『現代短歌ノート』改名)刊行記念! 穂村弘小澤實小池昌代の三人が、【性愛】【高齢者】【殺意】といったさまざまなテ-マに沿った短歌、俳句、百人一首を選出しました。「現代〈短歌×俳句×百人一首〉ノート」、韻文の楽しさ、面白さにあふれた鼎談です。


石田 千「家へ」

山田詠美「命の洗濯、屋」

シンのおじいちゃんて、ほんとは、ないえんのおっとなんでしょ――。同級生の言葉がきっかけで明らかになった、不可思議な家庭事情。東京で彫刻を学ぶようになった今も、故郷では「原始いなか的内縁生活」が続いていて……。「家へ」、複雑な人間関係を生きる青年の姿を丹念に描いた、石田千の飛躍作です。

世の中にはさまざまな「命の洗濯」のやり方がありましょう。私どもはそれを全力で叶えさせていただきます――。世界にただ一つの「命の洗濯屋」、順風満帆に商売をつづける主人だったが……。山田詠美「命の洗濯、屋」、必読です。


連作 町田 康、川上弘美、片岡義男

町田康の連作「ホサナ」は第10回。犬の芝居、公演当日。広域警備員に追い立てられ車を公便駐車場に駐車することになった私は、途轍もなく長いスロープを下る。その先には……。

政治と宗教、中央と地方、物流に交雑。かつての人類と同じ過程が再現されつつある――。大きな母の再来が噂される中、少しずつ数を減らしていく「見守り」たちは……。川上弘美「奇跡(後篇)」。世界が変化する。

男言葉でしゃべる女性作家・高村江利子は、親友の俳優・伊東竜二に頼まれ、彼の三人の姉妹を取材に向かう――。片岡義男がかつての自作とあえて同じタイトルを使い、まったく違う物語に仕立て上げた短篇「人生は野菜スープ」。タイトルと小説の妙なる調べをお楽しみください。


講演 蓮實重彦「「曖昧さ」について――『「ボヴァリー夫人」論』を例として」

「小説」《le roman》というジャンルが身にまとっている、本質的な「曖昧さ」とは? 蓮實重彦が、長編小説、散文、テクスト、三つの異なる水準から考察した講演「「曖昧さ」について――『「ボヴァリー夫人」論』を例として」を全文掲載です。


もくじ

〈特集「対話」〉

本を読もう。話をしよう。  小野正嗣×稲垣吾郎

連れ連れに文学を思う  古井由吉×堀江敏幸

現代〈短歌×俳句×百人一首〉ノート  穂村 弘×小澤 實×小池昌代

〈一挙掲載230枚〉

家へ  石田 千

〈短篇〉

命の洗濯、屋  山田詠美

〈連作〉〔10〕

ホサナ  町田 康

〈連作〉

奇跡(後篇)  川上弘美

人生は野菜スープ  片岡義男

〈講演〉

「曖昧さ」について――『「ボヴァリー夫人」論』を例として  蓮實重彦

〈連載小説〉

オライオン飛行〔5〕  髙樹のぶ子

我々の恋愛〔8〕  いとうせいこう

尻尾と心臓〔12〕  伊井直行

虚人の星〔13〕  島田雅彦

ビビビ・ビ・バップ〔19〕  奥泉 光

〈連載評論〉

鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔18〕  片山杜秀

〈世界史〉の哲学〔73〕  大澤真幸

〈随筆〉

ボクが闘ったもの  周防正行

出なくなった幽霊  司 修

かくれんぼ  呉明益 天野健太郎訳

再び書き始めるために  石岡良治

〈私のベスト3〉

私が相撲好きになった理由  大村 崑

ペンはわれらを調教する  山本貴光

変な秀歌  小島なお

〈書評〉

移りゆく季節と距離(『雨の裾』古井由吉)柴崎友香

印象派宣言(『匿名芸術家』青木淳悟)藤野可織

ニルヴァーナへ向かう笑い(『世界はゴ冗談』筒井康隆)中条省平

過剰さへの愛おしさ(『パールストリートのクレイジー女たち』トレヴェニアン著、江國香織訳)星野智幸

言葉の解体から生まれるもの(『文学の淵を渡る』大江健三郎、古井由吉)苅部 直

〈創作合評〉

鴻巣友季子+佐々木 敦+青木淳悟

「朝顔の日」高橋弘希(新潮2015年6月号)

「スティッキーなムード」岡田利規(新潮2015年6月号)

「十七八より」乗代雄介(群像2015年6月号)