群像2015年6月号

群像新人文学賞発表! 

乗代雄介「十七八より」

第58回群像新人文学賞決定! 豊穣な言葉で紡ぐ「あの少女」への無償の愛――。「凝りに凝った文体」「捨ておけない才気」「小説にしかできないやり方で現実と格闘している」と賞賛を呼んだ、ペダンティックな趣向に満ちたデビュー作、乗代雄介「十七八より」。新しい才能の誕生をぜひご確認ください。

少しずつ謎はほどかれる

連作 川上弘美「奇跡」

初めての予言は三歳のときだった。不思議な力を持った少女アーイシャと暮らす「見守り」のマリア。アーイシャの力は年々増していき、ついには触れただけで人を癒せるように。彼女の「奇跡」を会議で報告するマリアだったが、場はどうにも妙な雰囲気で……。川上弘美の連作第10回、「奇跡」(前篇)。完璧な世界が少しずつほどけていく。


作家を主人公とする連作第5回

片岡義男「どこから来て、どこへ」

作家を主人公とした片岡義男の連作、第5回は「どこから来て、どこへ」。作家の北尾裕之は、久しぶりに再会した同窓生の根岸忠幸と、焼き鳥の屋台に向かう。そこには正ちゃん帽をかむった、朗らかな初老の男性がいて……。男性三人のやりとりは、軽快で愛に満ちています。


連載 堂々の完結 

沼野充義「チェーホフとロシアの世紀末」

44歳という若さで結核によってこの世を去ったチェーホフ。医師でありながら、「自分は結核ではない」「たいした症状ではない」と言い続けたその理由とは? 沼野充義によるロシア文学論「チェーホフとロシアの世紀末」、堂々の完結です。


『〈世界史〉の哲学 イスラーム篇』刊行記念対談 大澤真幸×酒井啓子「イスラームの不思議」

イスラームという世界宗教を生み出し、ある時期まで明らかに先進国だった中東地域。そこで資本主義が発展しなかったのは一体なぜなのか? 『〈中東〉の考え方』酒井啓子『〈世界史〉の哲学 イスラーム篇』を刊行したばかりの大澤真幸が、解明します。対談「イスラームの不思議」、必読です!


もくじ

〈第58回群像新人文学賞発表〉

〈当選作〉

十七八より  乗代雄介

受賞のことば

選評  青山七恵 高橋源一郎 多和田葉子 辻原 登 野崎 歓

〈連作〉(前篇)

奇跡  川上弘美

〈連作短篇〉

どこから来て、どこへ  片岡義男

〈連載小説〉

オライオン飛行〔4〕  髙樹のぶ子

我々の恋愛〔7〕  いとうせいこう

尻尾と心臓〔11〕  伊井直行

虚人の星〔12〕  島田雅彦

ビビビ・ビ・バップ〔18〕  奥泉 光

〈連載評論〉

チェーホフとロシアの世紀末 最終回  沼野充義

鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔17〕  片山杜秀

〈世界史〉の哲学〔72〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔63〕  穂村 弘

〈随筆〉

『コルバトントリ、』という演劇  山下澄人

林黛玉という少女  井波陵一

巨匠のように  山田広昭

ハインリッヒの法則  清水保俊

〈私のベスト3〉

ウズベキスタンの三不思議  沼野恭子

ギャングスタ、ギャングスタ  波多野 陸

〈書評〉

「近代化」を拒むイスラーム(『<世界史>の哲学 イスラーム篇』大澤真幸)浜崎洋介

斜め上の、ささやかな「救い」(『かわいい結婚』山内マリコ)春日武彦

小説というカラクリを解く(『浪華古本屋騒動記』堂垣園江)安藤礼二

天皇不在の小説として(『宰相A』田中慎弥)矢野利裕

〈創作合評〉

鴻巣友季子+佐々木 敦+青木淳悟

「キッズ・ファイヤー・ドットコム」海猫沢めろん(群像2015年5月号)

「呪文」星野智幸(文藝2015年夏季号)

「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」滝口悠生(新潮2015年5月号)